修理・製本に使う道具と材料の紹介
2024年2月更新
資料保全室には、修理や製本、保存手当のためのさまざまな道具や材料があります。その一部をご紹介します。
道具
基本の道具
修理を行うための基本の道具です。
1、平筆:筆先が平らで、豚毛のようなコシが強い筆がよい。糊用と水用の2本必要。
2、カッター:刃はこまめに折って交換する。
3、ハサミ:刃の先端が薄い方が使いやすい。
4、目打ち:穴をあけるだけでなく、寸法を採ったり、折り筋をつけたり、用途は広い。
5、ピンセット:細めで先が鋭いものが使いやすい。
6、針:洋装本では先端のとがっていない製本用のものを使う。和装本には先のとがったものを用意。
7、ハンドタオル:水に濡らし固く絞って使用する。補修箇所の余分な糊をふき取る。
8、紙やすり:#150程度。写真のように筒状に巻いて使用すると便利。
9、定規:30cm以上で目盛りが端からあるものがよい。
10、カッターマット:300×450mm程度のもの。プラスチックの下敷きでも代用可。
11、板:2枚1組で使う。厚さ1cm程度あれば、シナベニヤやボール紙など素材はなんでもよい。
12、重石:補修した資料を乾燥させる時に使う。製図用の文鎮や5kg程度の漬物石が使いやすい。
その他の道具
小型の機械
大型の機械
材料
補修用の和紙
和紙の主な原料は、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)ですが、補修に使うのは、楮を原料とした楮紙(ちょし)が適しています。繊維が長く、なじみが良いのが特徴です。当館では、楮100%で、添加物がなく、滲み止めの加工がされていないものを使っています。楮の産地や製造時における楮繊維の処理方法・乾燥方法などによって楮紙の性質が異なるため、様々な劣化状態の資料に応じて適切な補修紙を選択できるよう多種多様な楮紙を用意しています。
参考)テキスト「修理のための基礎知識」
長期保存に適した保護用紙
接着剤
でんぷん糊と合成接着剤を用途に応じて使用しています。
参考)テキスト「修理のための基礎知識」
でんぷん糊
でんぷん糊は昔から使用されてきた接着剤で、米や小麦などの作物に含まれるでんぷんから作ります。水を加えると剥がすことができるので、修理を繰り返し行うためには適した接着剤です。でんぷん糊はそのまま使うことはほとんどなく、水で薄めて使用します。合成接着剤に比べ接着力が弱いのが欠点ですが、でんぷん糊の接着力で問題がない限り、基本的には、でんぷん糊だけで補修しています。
合成接着剤
ポリ酢酸ビニル系(PVAc系)エマルション接着剤を使用しています。接着力に優れ、速乾性がありますが、乾くと接着部分は硬くなり、容易には剥がせません。したがって、高い接着力が要求される部分、例えば洋装本の背固めなどで使用しています。使用する場合は、そのままではなく、でんぷん糊と混ぜて水で薄めた「混合糊」を使います。必要な接着力に応じて混合比率を変え、乾き具合や仕上がりの硬さを調整すると同時に、資料に対する悪影響を最小限にするよう心がけています。