御狂言楽屋本説(おきょうげんがくやのほんせつ)
三亭春馬 (さんていしゅんば)著 歌川国綱(うたがわくにつな) 画 安政6年(1859)刊 加賀文庫 加6039

 歌舞伎の舞台裏の仕掛けに用いる道具や作業を、図を主体に説明を付けて紹介した資料です。大道具や小道具を含めた歌舞伎の演出方法を知ることができます。


 文化・文政期(1804~1830)以降、怪談狂言などの流行に伴い、江戸三座の大道具を一手に引き受けていた大道具方・長谷川勘兵衛による大掛かりな仕掛けが誕生します。
 紹介しているページは、『妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)』の一場面で、吉野川の流れを表した「滝車」の仕掛けの様子です。通常、川の流れは浅葱色(あさぎいろ)の水布を使用しますが、この芝居では舞台奥から客席に向かってあたかも水が流れるかのように、仕掛けを工夫しています。
 ほかにも『東海道四谷怪談』の幽霊の提灯(ちょうちん)抜けや、戸板返し、燈籠(とうろう)抜け、石川五右衛門の宙乗りなどの種明かしなども載っています。仕掛けの種明かし本は観客の好奇心を満足させる人気の企画であったようで、このほかにも同じ趣向のものが数多く出版されています。

印刷する