助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)
歌川国貞(うたがわくにさだ)(初代)画 天保3年(1832)刊 東京誌料 M239-4-3

 歌舞伎十八番の一つ、『助六由縁江戸桜』の場面を描いた作品。松本幸四郎、市川海老蔵、岩井半四郎という現在でも名前が受け継がれている人気役者たちが演じています。


 助六は正徳3年(1713)、江戸山村座上演の『花館愛護桜(はなやかたあいごのさくら)』で、二代目市川団十郎が扮したのが始めとされています。名優たちが代々洗練を重ね、天保3年(1832)の上演時に、「市川流十八番の内」として、市川団十郎家の「家の芸」として完成したと言われています。このとき七代目団十郎は八代目に名跡をゆずり、自分は再び前名の五代目市川海老蔵を名乗りました。
 この場面は、男伊達花川戸助六(おとこだてはなかわどすけろく)、実は曽我五郎が、宝刀詮議(ほうとうせんぎ)のため吉原へ通い、遊客に喧嘩を売っては刀を抜かせるところです。意休役・松本幸四郎の文字の墨色が濃く、顔の周辺に埋木のあとが見られるうえ、幸四郎の衣裳は、本来坂東家を象徴する花勝見の模様になっています。おそらく三代目坂東三津五郎が出ることになっていて版木も完成していたところ、幸四郎に変更になり、急きょ顔の部分のみ入れ替えたのではないかと考えられます。

印刷する