縞揃女弁慶 [一谷嫩軍記](しまぞろいおんなべんけい いちのたにふたばぐんき)
歌川国芳 (うたがわくによし)画 天保15年(1844)刊 東京誌料 K662-20-5

 武者絵を得意とした歌川国芳が描いた10枚揃いの見立美人画シリーズの1枚です。タイトルのとおり描かれた女性はみな弁慶縞(弁慶格子)の着物を着ています。


 『縞揃女弁慶』のシリーズは、「縞揃」とあるように、江戸時代に大流行した縞模様の着物を着た美人を描いた連作です。
 この絵に描かれた弁慶縞(弁慶格子とも言います)とは、縞柄の一種で、2色の色糸を縦・横双方に用いて同じ幅の碁盤模様に織ったものです。歌舞伎の『勧進帳』に出てくる、山伏姿の弁慶の舞台衣装にちなんで名付けられました。
 このシリーズ全体が「弁慶」をテーマにした錦絵で、絵の内容も弁慶の説話にまつわるシーンを想起させる見立絵となっています。女性が手に持っている高札や画面にある和歌「鉢植の花はをらねど勅札の掟ににたるゆひのふか爪」から歌舞伎『一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)』の3段目「熊谷陣屋(くまがいじんや)」の場面に見立てたものと思われます。

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