芭蕉肖像真跡(ばしょうしょうぞうしんせき)
渡辺崋山 (わたなべかざん)画 天保年間(1830~1844)頃刊 東京誌料 421-C2-5

 江戸時代の俳人といえば松尾芭蕉の名前を多くの人が思い浮かべるでしょう。この作品は江戸時代後期の蘭学者・画家の渡辺崋山(1793~1841)が描いた芭蕉の肖像画です。


 松尾芭蕉が確立した「蕉風(正風)」と呼ばれる芸術性の高い俳風は、芭蕉亡き後も多くの門人に受け継がれました。
 江戸時代、大流行した俳諧は、正しくは俳諧連歌と呼ばれるもので、中世以来の連歌から分岐して、遊戯性や諧謔性を高めた集団で行う文芸であり、発句や連句といった形式の総称を指しました。しかし芭蕉の登場により冒頭の句である発句の独立性が高まり、発句のみを鑑賞する事が多く行われるようになりました。この発句のみの俳諧が、明治時代、正岡子規によって確立する俳句の源流となります。
 芭蕉没後も芭蕉の影響を受けた与謝蕪村や小林一茶といった俳人たちが登場することによって江戸時代の俳諧ブームは続いていきます。その意味でも芭蕉の残した功績は非常に大きいものと言えるでしょう。

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