東京築地ホテル館(とうきょうつきじほてるかん)
歌川芳虎(うたがわよしとら)画 明治3年(1870)刊 東京誌料 728-C3

 築地ホテル館は築地の外国人居留地に建てられた日本最初の洋風ホテルです。その姿は新しい時代を迎えた東京の新名所としてたちまち評判となり、多くの見物人が訪れ、絵師達は競って錦絵に描きました。


 作者・歌川芳虎(1828頃~1888頃)は、幕末から明治時代中期にかけての浮世絵師です。芳虎がもっとも得意としたのが明治維新前後の目新しい風俗を描いた横浜絵、開化絵と呼ばれた絵で、この作品も開化絵の一つです。
 築地ホテル館は正式名称を江戸ホテルといい、この絵からは外囲い越しに洋風建築の上層部が見えます。間口約73.6m、奥行約61.8m、延べ床面積5354.4㎡で゙、102室あったということです。
 明治元年に竣工したものの、明治5年、銀座の大火で焼失したため、「幻のホテル」と言われていますが、幕末から明治への新しい時代の幕開けを象徴する建物として歴史にその名を残しています。築地ホテル館があった場所は、現在の中央卸売市場(築地市場)の立体駐車場あたりです。

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