江戸雀(えどすずめ)
菱川師宣(ひしかわもろのぶ)画 延宝5年(1677)刊 加賀文庫 加243

 『江戸雀』は江戸で刊行された初めての江戸地誌です。実用的な江戸の名所案内として作られており、巻末にはおよそ東西南北三里四方の大概を記すとあり、大名屋敷・社寺・町・橋の総数などが付されています。京都・大坂(難波)の町案内書と合わせて「三雀」と呼ばれていました。


 江戸時代初期に刊行された江戸地誌は、地理案内としての正確性や実用性よりは、新興都市江戸を紹介する読み物に近いものが多くありました。また、江戸の書店が未発達な状況だったこともあり、多くは上方で出版されていました。
 本書は、江戸在住の著者、版元によって出版された最初の江戸地誌とされており、浮世絵の創始者ともされる菱川師宣が挿絵を描いた本としても高く評価されています。
 序には、地方から出府してくる人々のために、名所・旧跡・寺社などを案内する実用書として著したと記されています。主として府内を方角別に分け、大名屋敷、社寺、名所旧跡の案内をはじめ、街の家並みに至るまで詳しく記され、詳細な道順を知ることができます。

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