東都近郊図(とうときんこうず)
 文政8年(1825)刊13年修 東京誌料 050-2

 江戸近郊を遊覧する人々のために刊行された案内図です。東は現在の千葉県の小金や船橋あたりまで、南は羽田や神奈川県川崎市・横浜市青木町のあたり、西は府中、北は埼玉県の大宮や岩槻あたりまで載っています。


 江戸時代後期になると、江戸の町だけでなく、その近郊まで観光や遊覧を目的に出掛ける人々が増えていきます。そのため、本図にも、名所旧跡・神社仏閣・村名・新田名などが記載され、記号によって表示を統一しています。
 「数日ヲ費サスシテ遊覧スヘキモノヲ図シテ、遊行ヲ好ム者ノ便トス」と解説にあるように、この頃、郊外の散策が盛んであったことがわかります。本図は文政13年(1830)に改版されていますが、その後、花暦一覧表を加えた『東都花暦名所案内』をはじめ、本図を真似た近郊図がいくつも刊行されていることから、この時期になると、江戸の周辺地域も発展していっていたことがわかります。

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