大江戸年中行事之内 正月二日日本橋初売(おおえどねんちゅうぎょうじのうち しょうがつふつかにほんばしはつうり)
橋本貞秀(はしもとさだひで)画 万延元年(1860)刊 東京誌料 0421-C22

 日本橋にあった魚河岸において、正月2日に行われる初売りの様子を描いた作品です。普段から魚河岸には多種多様の魚が並べられ、多くの人々で賑わっていましたが、初売りの時は、江戸橋まで店が軒を連ねていました。


 元旦の江戸の町は人通りもほとんどなく、庶民の多くは正月を寝て過ごしていたそうです。人々が動き出すのは2日からのことで、子供たちの書き初めも、商家に初荷が届くのもこの日です。初売り・初商いと称して、色々な景品をつけて馴染み客にサービスしました。とくに賑わいを見せたのが魚河岸の初売りです。2日の朝市は図にあるように大勢の買い物客であふれかえっていたそうです。
 日本橋魚河岸の始まりは、江戸時代初期にまで遡ることができます。江戸に幕府を開いて間もない時期、徳川家康は、江戸城内の台所を賄うため大坂の佃村から漁師たちを呼び寄せ、江戸湾内での漁業の特権を与えました。漁師たちは魚を幕府に納め、残りを日本橋で売るようになりました。これが魚河岸の始まりと言われています。
 以後、日本橋の魚河岸は関東大震災の被害によって築地に移転されるまで、江戸および東京の台所として活況を呈しました。

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