卯の花月(うのはなづき)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)画 嘉永頃(1848~1854)刊 東京誌料 07661-C2

 作品名に「卯の花月」とあるように、4月の江戸の町の様子を描いた作品です。長屋の前で男性が鰹をさばいていますが、これは長屋の住民みんなで買った1本の鰹を切り分けている様子です。


 この作品は4月の様子を示した作品ですが、鰹以外にも、この時期の風物詩を示すものが描かれています。それが左辺の画面下に裏返して貼ってある紙です。
 紙には「千早振る卯月八日は吉日よ、神さげ虫をせいばいぞする」とあります。これは灌仏会(かんぶつえ)の際に家へ持ちかえった甘茶で墨をすって、この歌を書いて貼ると虫除けとなるという俗信によるもので、文中の「神さげ虫」とは蛆(うじ)のことを指します。
 灌仏会とは、別名・花祭りとも呼ばれ、4月8日に行われる釈迦誕生を祝う仏教行事のことです。この日、甘茶をもらえるというので、子供たちは早起きしてお寺に行ったそうですが、この甘茶を使って墨をすったのです。

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