意勢固世見見立十二直 建 皐月初幟 暦中段つくし(いせごよみみたてじゅうにちょく たつ さつきはつのぼり こよみちゅうだんづくし)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)画 弘化4年(1847)~嘉永元年(1848)頃刊 東京誌料 0763-C5

 5月5日といえば、端午の節句(たんごのせっく)です。コマ絵(枠内の絵)にはこの日に欠かせない鯉のぼりと幟が、中央にはお祝の席に使われる見事な鯛を見つめる女性2人が描かれています。


 江戸時代、端午のお祝いは、当初は武家を中心として行われていましたが、後には町家も戸外に幟を立て、兜人形を飾り、男の子の成長を祝うようになりました。
 コマ絵にあるような鯉のぼりを飾る風習が誕生したのは、江戸時代後期頃のことです。現在のような色鮮やかな錦鯉はそれほど普及していなかったため、鯉のぼりも真鯉を模したものが多く、また町人のなかでも富裕層のみの贅沢(ぜいたく)な風習だったようです。
 なお、女性の後ろに描かれている刀は菖蒲刀(しょうぶがたな)と呼ばれるものです。古くは子供が菖蒲を太刀のようにして帯びていましたが、江戸時代になると柄を菖蒲の葉で巻いた木刀、飾りものとして金銀で彩色した木刀を指すようになりました。

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