江戸名所百人美女 堀切菖蒲(えどめいしょひゃくにんびじょ ほりきりしょうぶ)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)、歌川国久(うたがわくにひさ)(二代)画 安政4年(1857)刊 東京誌料 025-C1-87

 菖蒲の名所・堀切を見物に訪れた女性を描いた作品です。葛飾区内に今も残る堀切の菖蒲園は江戸の昔から開花の季節になると、数多くの遊覧客が訪れました。


 菖蒲は端午の節句(たんごのせっく)に欠かせない植物です。邪気を払い、蛇や虫の毒にも効果があるとされた菖蒲酒を飲むことや、菖蒲湯に浸かることは、夏の伝染病や流行病を恐れる江戸の人々にとって、厄除けの意味も持っていました。
 堀切に花菖蒲が伝来した時期についてはよくわかっていません。室町時代にこの地の地頭であった久保寺胤夫の家臣・宮田将監が奥州郡山(福島県郡山市)の安積沼(あさかぬま)から菖蒲を取り寄せて栽培を始めたのがその由来とも、また文化年間(1804~1818)に、この地の百姓・伊左衛門という人物が菖蒲に興味を持ち、本所の旗本・万年録三郎から「十二一単」を、花菖蒲愛好家・松平左金吾から「羽衣」や「立田川」などの品種をもらって、繁殖させたのがその由来とも言われています。

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