名所江戸百景 市中繁栄七夕祭(めいしょえどひゃっけい しちゅうはんえいたなばたまつり)
歌川広重(うたがわひろしげ)(初代)画 安政年間(1854~1860)刊 東京誌料 07711-C7

 7月7日の七夕の行事を扱った作品です。種々の飾り物をつけた葉竹が家々の屋根に高々と立ち並び、風にゆらぐ情景は、現在の東京の規模の小さな七夕祭とはだいぶ趣を異にしています。


 江戸時代、江戸の町では、7月7日の前日未明から、家々の屋上に七夕竹を立てる風習がありました。そのため七夕前になると、市中には笹竹売りの呼び声が響いたと言います。竹には短冊のほかに、様々なものが飾られましたが、家や町ごとに様々な趣向を凝らした飾り物が作られたそうです。
 この絵にあるように短冊竹に盛大に飾られた瓢箪(ひょうたん)、西瓜(すいか)、大福帳(だいふくちょう)はその7日の夕方には取り払われて、川や海に流されます。ほんの1日のみ江戸の町を彩る行事でした。
 またこの日は学問の神様・菅原道真を祀る(まつる)北野神社の神事にちなんで、字が上手になるよう願いを込めた「硯洗い(すずりあらい)」が子供たちによって行われる日でもありました。

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