江戸自慢三十六興 道灌やま虫聞(えどじまんさんじゅうろっきょう どうかんやまむしきき)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)、歌川広重(うたがわひろしげ)(二代)画 元治元年(1864) 東京誌料 0521-C1

 道灌山(現・荒川区西日暮里4丁目あたり)は江戸時代、「虫聞」の名所として、また夕涼みの場所として、多くの人々が足を運びました。


 虫聞の名所には道灌山だけではなく、隅田川東岸、王子や飛鳥山(あすかやま)などがありました。場所によって鳴く虫が違うため、鈴虫の声を聞きたい時は飛鳥山、松虫の場合は道灌山というようにその時々の気分によって使い分けていたようです。それほどまでに当時の人々の虫の声への関心は高く、自宅で飼いたいという人も出てきたため、市中には竹かごに虫を入れて売り歩く虫屋もいました。
 道灌山は、江戸時代には筑波や日光の連山、下総国府台(しもうさこうのだい)なども望むことができたそうです。本図をはじめ、道灌山の「虫聞」を描いた作品は数多く残されています。

印刷する