菊月(きくづき)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)画 弘化4年(1847)~嘉永元年(1848)頃刊 東京誌料 07773-C1

 菊月とは9月のことです。五節句の一つで9月9日の重陽(ちょうよう)の節句は、菊が咲く季節に行われることから菊の節句とも呼ばれます。この絵には色とりどりの菊を背景に着飾った女性たちが描かれています。


 重陽は五節句のなかで、現在もっともなじみの薄い行事と言えるかもしれません。しかし江戸時代には、この日は諸大名以下、江戸城に集まり、重陽の御祝儀が行われ、菊酒で祝いました。菊酒は菊の花を酒に浸したもので、邪気を払い、寿命を延ばすと考えられていたからです。
 菊花の鑑賞も江戸に暮らす人々の楽しみの一つでした。江戸時代は園芸ブームが起きた時代です。江戸時代前期から菊の栽培熱は高まり、多種多様の品種が生み出され、庶民の間でも「菊合わせ」と呼ばれる新花の品評会が行なわれました。重陽の節句に欠かせない「菊人形」の見世物も文化年間(1804~1818)に、染井(そめい 現・豊島区駒込あたり)の植木屋が始めたものです。

印刷する