一陽春侍黄金祝儀台(いちようのあけぼのこがねのしまだい)
 文久3年(1863)頃 東京誌料 5713-C29

 毎年恒例の11月の顔見世興行の際は番付が刷られますが、これはその番付を真似て制作されたものです。江戸三座(中村座・市村座・守田座(もりたざ))に出演している当時の人気役者たちの名前を見ることができます。


 江戸の人々にとって11月1日は特別な日でした。芝居小屋にとって、この日から始まる1年間、この小屋で演じる俳優の顔を見せるための重要な行事の日で、歌舞伎の正月とも言われていました。
 顔見世の前には様々な儀式がありました。また上演される作品にも約束事が多くあります。観客もこの行事を楽しみにしており、初日前日の夜に徹夜をして入場することもありました。しかし幕末になると俳優の契約期間があいまいになったこともあり、顔見世はあまり行われなくなりました。
 顔見世興行の際に作られた番付を、顔見世番付、または極番付(きまりばんづけ)といいます。劇場正面の絵看板を大判1枚刷で表した辻番付と呼ばれるものと形状は同じですが、紹介した絵にあるように、上段には定紋(じょうもん)を打った櫓幕(やぐらまく)を描き、その周囲に座元、役者、作者などの名を配して並べ、下段には座頭(ざがしら)を中心に全役者をそれぞれ地位に見合った位置に配して絵姿を描きました。この役者たちの位置を定めるのは作者と座元で、かなり苦労したそうです。

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