江戸自慢三十六興 酉の丁銘物くまで(えどじまんさんじゅうろっきょう とりのちょうめいぶつくまで)
歌川豊国(うたがわとよくに)(三代)、歌川広重(うたがわひろしげ)(二代)画 元治元年(1864)刊 東京誌料 3391-C33ア

 11月の酉の日に行なわれる祭礼「酉の市」(とりのいち)を描いたものです。男性は右手に福をかき込むためのおかめの熊手、左手には人の上に立つための芋頭(いもがしら)を縁起物として持っています。


 「酉の市」は、江戸近郊の花畑(足立区)にある鷲神社(おおとりじんじゃ)に近くの農民が熊手を奉納したことが始まりと言われています。しかし、花畑は江戸から少し離れていることもあり、「新鳥」と呼ばれた下谷の鷲神社(台東区竜泉)の酉の市へ人々は集まるようになりました。
 この絵にも見えるように酉の市では、熊手やおかめの面、芋頭などの縁起物が付きものです。現在でも浅草をはじめ関東の各地で酉の市が開催されており、熊手を売るお店が立ち並んでいるのを見ることができるでしょう。
 また、吉原ではこの11月の酉の日に限り、門を開放し、一般の通行を許可したそうです。それほど江戸の人々にとって酉の市はなくてはならない年末行事の一つだったのです。

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