百歌撰(ひゃっかせん)
林屋正蔵(はやしやしょうぞう)(初代)作 五雲亭貞秀(ごうんていさだひで)画 天保5年(1834)刊 2巻2冊 東京誌料 445-4

 書名の由来は、巻頭の口上に「『百人一首戯講釈』(ひゃくにんいっしゅおどけこうしゃく)、『小倉山曲輪の大詰』(おぐらやまくるわのおおづめ)から想を得て補ったことから」と記されています。


 西両国広小路での林屋の定席の興行の様子を描いた広告「元祖/大道具/大仕掛/妖怪(ばけもの)ばなし 林屋正蔵」の看板を掲げ、「怪談噺」の元祖と自他ともに認識していたことが窺えます。「晴雨にかかわらず、毎日朝四ツ時より夕方迄、連中かわりかわり出席仕り、今むかし物語、くさぐさのはなし披講仕候」と前文にあるように、本書は林屋一門における高座を彷彿とさせる長咄から成っています。現行落語の『金明竹(きんめいちく)』(本書『阿呆の口上(あほうのこうじょう)』)や『弥次郎(やじろう)』の原話が載っており、咄家による咄本の資料として注目される作品です。

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