[菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
歌川国貞(うたがわくにさだ)(初代)画 天保11年(1840)刊 東京誌料 M139-13-2

 この錦絵は、歌舞伎「菅原伝授手習鑑」の「車引(くるまびき)」の名場面です。平安時代に、策略により菅原道真(すがわらみちざね)が太宰府へ流罪(るざい)にされた史実を歌舞伎とし、ここでは、敵味方に分かれた3兄弟の心の葛藤を鮮やかに切り取っています。


 実際に上演された歌舞伎をもとに“役者絵”が盛んに製作され、この絵も天保11年(1840)に中村座で上演された時のものと思われます。松王丸を5代目市川海老蔵が演じており当時の人気ぶりが窺えます。歌舞伎は江戸時代の娯楽の一つで、役者絵はブロマイドとしても流通しました。人気役者がまとった衣装の色合い、模様、着こなし、帯の結び方、髪型、小道具など、多くの流行が歌舞伎から生まれ、江戸の庶民に広がりました。

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