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今こそ読みたい!ネットで読めるおすすめ作品

学校や図書館などのお休みの間でも、読書を楽しめるように、インターネット上の図書館「青空文庫」の作品から、東京都立図書館の司書がおすすめの作品を紹介します。
「青空文庫」とは、著作権(文章などを書いた人の権利)がなくなった作品などを公開しているサイトです。パソコンや携帯電話などで、おうちにいながら、誰でも無料で作品の全文を読むことができます。(作品名をクリックすると「青空文庫」の作品ページへ移動します。)
そして、図書館が開いたら、ぜひ図書館に来て、今度は紙の本でじっくり作品を楽しんでくださいね。

星のマークは難易度です。難易度は、星1つが小学校高学年以上むけ、星2つが中学生以上むけ、星3つが高校生以上むけを表していますが、目安ですので、あまり気にしすぎず、ぜひ自分で読んでみて楽しいと思うものを読んでください。
自分で読むのが難しい人は、おうちの人と一緒に読んでもよいですね。

作品名順

「赤い蝋燭と人魚」小川未明著星2つ

北の海に女の人魚が棲んでいた。冷たくて暗い海で暮らすことがたまらなく、お腹の中の赤ん坊には人間の町で暮らしてほしいと願った。ある夜、女が産み落とした赤ん坊はろうそく屋の老夫婦に拾われ、美しい娘に成長する。娘が、赤い絵具で描いたろうそくの燃えさしを身につけると、どんな大暴風雨でもおぼれて死ぬようなことはないといううわさが広まった。このことを聞きつけた香具師が、娘を売ってくれるよう老夫婦に頼みに来る。初めは断った老夫婦だったが...。
大正10(1921)年、新聞に連載された小説。作者の小川未明は、新潟県の雁子浜(がんこはま)に伝わる人魚伝説から発想を得たと言われている。読み始めると、心の中に不思議な世界がぽかんと浮かんでくる。読んでみてください。(司書B)

読了目安:30分以内

「オツベルと象」宮沢賢治著星2つ

表紙

『新編銀河鉄道の夜』新潮文庫
(「オツベルと象」収録)

教科書にも掲載された賢治の寓話ですが、読み終わるとたくさんの「もしもこうだったらどうなったの?」がうかんできます。「もしオツベルが象をかわいがったら?」「もし象が白象じゃなかったら?」「もしオツベルが貧乏だったら?」結末はどうなったでしょうか。
賢治は作品にずっと手を入れ続けたことで知られていて、『銀河鉄道の夜』は4種類の原稿が残っています。原稿が残っていないこの作品、賢治になったつもりで別のストーリーを考えてみませんか?(司書N)

読了目安:30分以内

「お伽草紙」太宰治著星3つ

『お伽草紙』は、だれでも知っているお伽話を作家の太宰治が巧みに料理し、創作した物語集だ。浦島太郎はお爺さんになって本当に不幸だったのか?カチカチ山のタヌキはなぜあんなにも酷い仕打ちを受けねばならなかったのか?そんな疑問のもと、収録作品は実にユーモラスに、毒気たっぷりに創作されている。
また、本作は敗戦直後に刊行された。新たな文学作品が発表されることはほとんどなかった混乱した状況の中で、太宰はどのような思いで本作を執筆したのか。そんなことも頭の片隅に置きながら、太宰の創る物語を楽しんでみよう。(司書W)

読了目安:1時間以上

「外套」ゴーゴリ著星3つ

表紙

『外套・鼻』ゴーゴリ著,平井肇訳
岩波書店

ロシアの文豪といえばドストエフスキーやトルストイが有名ですが、そのドストエフスキーが「私たちはみんなゴーゴリの外套の中から出てきた」と言った、という伝説のある作品(あくまで伝説です)。1843年(天保14年、日本がまだ鎖国していた頃)に発表された小説なのに、世界の作家たちに今も影響を与え続けています。
主人公は、アカーキイ・アカーキエウィッチという変な名前のさえない公務員。作品の名前になっている「外套」(がいとう)とはコートのことで、ロシアの寒い冬にはかかせないものですが、彼の外套はつぎはぎだらけ。それで、一大決心をして新しい外套を作る、という話です。それのどこが面白いのか?ぜひ、実際に読んでみてください。家にいながらにして、ロシアの雰囲気を感じられる作品です。
ちなみに、芥川龍之介の「芋粥」(いもがゆ)は、この作品に似ているといわれます。ゴーゴリには「鼻」という作品もありますが、これも芥川龍之介の「鼻」とよく似ている、といわれます。どれも青空文庫で読めるので、読み比べてみるのも面白いかも。(司書L)

読了目安:1時間以上

「科学に志す人へ」寺田寅彦著星3つ

物理学者・随筆家として著名な筆者が、自身の三十年前の学生生活を振り返った随筆。
当時教程として教わったことがのちにそのままで役に立ったのはわずかである、と感じるのは思い違いだと述べています。それがなければ学究生活の第一歩さえままならず、やはり大事なものであったのだと回想しています。
みなさんが「今勉強していることは将来に必要なのだろうか」と思ったとき、読んでみてはいかがでしょうか。(司書T)

読了目安:10分以内

「硝子戸の中」夏目漱石著星3つ

表紙

『夏目漱石全集 10』ちくま文庫
筑摩書房(「硝子戸の中」収録)

「硝子戸の中にじっと坐っている私なぞはちょっと新聞に顔が出せないような気がする。私が書けば政治家や軍人や実業家や相撲狂を押し退けて書く事になる。」とほとんど外出しなかった当時に身近に起きた出来事について書かれた随筆です。手紙や来客とのやりとりで、漱石の人との関係や考え方がわかり興味深く読めます。
また、知人や犬の死の回想、身の上話をした女の客から小説を書く場合「女が死ぬ方がいいとお思いになりますか、それとも生きているようにお書きになりますか」と問われたことなど死に関する記述も多く、漱石の死生観がわかる作品です。(司書V)

読了目安:1時間以上

「魏志倭人伝」陳寿著星5つ(超高難易度)

女王卑弥呼が統べる国、邪馬台国。3世紀には日本列島にあったという。所在地は今も謎だ。邪馬台国について、文字で記録されているのが、古代中国・魏という国の歴史書の一部分、『魏志倭人伝』だ。
倭人伝の記述の始まりは、「倭人在帯方東南大海之中、」。全て漢字で書かれている。だから、一文字ずつ、コツコツと読み解いてみよう。そして推理してみよう。邪馬台国は列島のどこにあったのか? 卑弥呼はどんな人だったのか?(司書Z)

読了目安:1時間以上(漢文です。)

「銀の匙」中勘助著NEW星3つ

こ小箱の中の銀の匙は、ひ弱だった私に薬を飲ませるため、叔母さんが持ってきてくれたものだ。和泉町のお稲荷さんは叔母さんに背負われ出かけた所。玩具の小犬と牛は私のたった二人の友達だった。著者の幼い日の喜びや恐れがちりばめられた自伝小説。
『TAMA selection 高校生のためのおすすめ本200冊』より)

読了目安:1時間以上

「クラリモンド」ゴーチェ著
(岡本綺堂訳「世界怪談名作集」所収)
星3つ

聖職者ロミュオーの美女クラリモンドへのかなわぬ恋。彼らを引き裂くのは信仰、そして彼女自身の死。しかし彼女は再びよみがえり、二人はヴェニスで絢爛豪奢な生活を送るようになります。
これは夢なのか、現実なのか。2つの世界を行き来するロミュオーはある夜、愛を誓いながら泣くクラリモンドに血を吸われ、彼女が吸血鬼であることに気づいてしまいますが・・・。
『死霊の恋』のタイトルでも知られる本作は19世紀フランスの詩人ゴーチェによる短編小説。文章から色彩豊かに浮かび上がる幻想的な世界は、当時の音楽やバレエに多くのインスピレーションを与えました。また、ゴーチェが台本を執筆したバレエ「ジゼル」はとても有名です。
若さゆえに惹きつけられる「この世ならぬもの」の美や愛の形がここにはあります。10代だけの特権で、感じるままに味わっていただければと思います。(司書S)

読了目安:1時間以上

「グスコーブドリの伝記」宮沢賢治著星2つ

イーハトーヴの大きな森に両親と妹と暮らしていた少年、グスコーブドリのお話。
ブドリが10歳になった年、イーハトーヴはひどい寒波に襲われた。夏が来ても暑くならず、麦に実がつかない。とうとう食べ物は底をつき、ブドリの家族はちりぢりになってしまった。沼ばたけで働き始めたブドリは、仕事の合間に、作物がよく育つための方法を書いたクーボー先生の本を読んだ。
それからも、寒波や干ばつはやってきた。ブドリは作物を守る方法を見つけたいと、クーボー先生の学校を訪ねる。 このお話には農学校で教師をした宮沢賢治の、気候や植物についての知識が詰まっている。ブドリがどんな方法を見つけるか、確かめてみてほしい。(司書Y)

読了目安:1時間以上

「困惑の弁」太宰治著星3つ

表紙

『太宰治全集 10』筑摩書房
(「困惑の弁」収録)

太宰先生、小説家を目指す人に向けて、アドバイスをお願いします。そんな依頼を受けた太宰治による、困惑しながらの忠告です。「カフェに行って、お金を乱費してはいけない」「必ず腹巻をしなければならない」「恋は、必ず片恋のままで、かくして置け」。妙に具体的なありがたいお言葉に、小説家になれるかどうかはわかりませんが、太宰が好きになります。とても短いので、箸休めにどうぞ。(司書E)

読了目安:30分以内

「山月記」中島敦著星3つ

表紙

『李陵・山月記』新潮文庫

「ローセーノリチョーワハクガクサイエイ・・・」高校で覚えた冒頭の一文は今でもソラで唱えられる、そんな大人は多いかもしれません。
己れの詩才を自負する余り、世に受け入れられない絶望の中で虎と化した李徴。旧友に再会してことの顛末を語るのですが、人語を話す虎の悲哀と滑稽、その後の李徴は虎として生きたのか人として死んだのか、刺さったとげのようにいつまでも気にかかる物語です。
未だ何者でもないが何者かでありたいと焦る、作中でいう「臆病な自尊心」でいっぱいの高校生だったからこそ、この短い物語が身に染みたのかも。今でも同期会の席上では、誰かがこの冒頭を唱え出すと皆がそれに続くという、私たちの伝説の物語。ぜひナレーション風に重々しく読み上げて、詩情豊かな文体をお楽しみください。(司書A)

読了目安:30分以内

「自転車日記」夏目漱石著星3つ

イギリスに留学中の夏目漱石。下宿屋のおばあさんが言うことには「自転車に御乗んなさい」。「ああ悲(かなし)いかなこの自転車事件たるや」、漱石と自転車との格闘が始まります。自転車にしがみついた漱石は、無事に坂道を駆け下りることができるのか?
一見難しい文章ですが、よく読むと抱腹絶倒のエッセイです。文豪を身近に感じられること間違いなし!(司書E)

読了目安:30分以内

「女生徒」太宰治著星3つ

「いやだ、いやだ。朝の私は一ばん醜い。」朝起きてから眠るまでの一日が、少女の独白で語られます。
家に来る上品ぶった夫婦や外面のよい母親に、むかむかして、泣きたい気持ちになるけれど、私はうれしそうな顔をして見せるのです。
妄想したり、落ち込んだり、目まぐるしく変わる私のつぶやきに、思わず共感してしまいます。30歳になる太宰が、女子学生になりきって描いたユニークな短編小説です。(司書D)

読了目安:1時間以上

「セロ弾きのゴーシュ」宮沢賢治著星1つ

表紙

『新編銀河鉄道の夜』新潮文庫
(「セロ弾きのゴーシュ」収録)

金星音楽団でゴーシュは、セロ(チェロ)を弾いています。仲間の楽手のなかではどうやら一番下手らしく、楽長にはいつも叱られてばかりです。
演奏会が近づいて、ゴーシュは家でも虎みたいな勢いでセロの練習をしていました。そうして、夜中を過ぎたころ、誰かが扉をとんとんと叩きました。入ってきたのは重そうにトマトを抱えたねこです。ねこはにやにやわらって「トロメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから」と言いました。ゴーシュは「生意気だ、生意気だ、生意気だ。」と腹を立て、嵐のような勢いで「印度の虎狩」を弾き始めました...。
演奏会までにゴーシュのセロは上達するのでしょうか?動物たちとがんばるゴーシュの姿に元気をもらえます。(司書X)

読了目安:1時間以内

「創作人物の名前について」夢野久作著星2つ

小説には必ずと言っていいほど出てくる、登場人物の名前。そんな名前選びについて書いた夢野久作のエッセイがあります。
久作にとって名前選びは、子どもの名前や自身のペンネームをつけるよりも苦心することだったようで、久作流四つの条件を挙げて、その悩ましさを語っています。
「悪人の名前にウッカリ実在の名前を使うと、その名前の人は作者に対して報復のしようのない怨恨を抱くおそれがある」など、ありえなくはないかもしれないが考えすぎでは...と思ってしまうような悩みを抱いていたようです。
どんな名前で、どんな性格の登場人物が出てくるのか、いつもとは違った視点で小説を読みたくなるかも。(司書Q)

読了目安:30分以内

「草木塔」種田山頭火著星3つ

表紙

『現代日本文學大系 95 現代句集』
筑摩書房(「草木塔」収録)

「分け入つても分け入つても青い山」の句はこの本に収められています。山頭火は漂泊の俳人と呼ばれていますね。確かに「この旅、果もない旅のつくつくぼうし」や「月が昇つて何を待つでもなく」を読むと、一人で旅をしている、ちょっと寂しげな、草や木や虫の中に溶け込んでいるような様子が分かります。
山頭火はどんな青い山を歩いたのでしょうか?私は、初夏の林間を汗をかきながら歩いている時に、さーっと流れてくる涼風に吹かれるとこの句を思い出します。
あなたの青い山はどんな山でしょうか?(司書U)

読了目安:1時間以内

「それから」夏目漱石著星3つ

表紙

『それから』新潮文庫

主人公の長井代助はもうすぐ30才になろうかという、いわゆる高等遊民。大学を卒業した後は、職業には就かず、結婚もせず、実家から毎月の生活資金を得て暮らしています。
そんな代助の暮らしに転機が訪れます。3年前に関西へ見送った平岡夫妻が、職を失い帰京したのです。何かと夫妻の世話を焼くうちに代助は、平岡の妻三千代への愛が甦ります。かつて代助は、三千代に好意を持ちながら、友情のため二人の結婚のため尽力したのでした。
折しも実家の父からは縁談を強く勧められ、断れば生活費の援助も失うかもしれない、平岡に本当のことを話せば友情を失うかもしれない、2つの渦に代助は巻き込まれていきます。
最終的に代助は実家と友人と別れ、職業を得て三千代と生きていこうと決意します。あなたは代助をどう思うでしょうか。(司書I)

読了目安:1時間以上

「注文の多い料理店」宮沢賢治著星1つ

表紙

『注文の多い料理店』
新潮文庫

二人の太った若い紳士が山奥に狩りにやってきました。道に迷った二人の前に現れた、立派な西洋料理店「山猫軒」は、なぜだかとても「注文の多い」料理店です。「ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください」、「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」――。はたして二人は料理にありつけるのでしょうか。
情景が目に浮かぶような生き生きとした文章で、すぐ読めて、クスリと笑えるお話です。
宮沢賢治の作品は、他にも青空文庫でたくさん読むことができます。学校の授業で触れた人も多いかと思いますが、この機会にぜひ、じっくり読んでみませんか?(司書C)

読了目安:30分以内

「月夜とめがね」小川未明著星1つ

表紙

『小川未明童話集』新潮文庫
(「月夜とめがね」収録)

ある月のきれいな夜のこと、針仕事をしていたおばあさんのところに、めがね売りがやってきます。ちょうど目がかすんでこまっていたおばあさんは、「なんでもよく見えることうけあい」のめがねを一つ買いました。しばらくすると、今度は、指をけがした女の子がやってきました。ところが、買ったばかりのめがねをかけて見てみると――。
小川未明の作品はショートショートのような短いものも多いですが、独特な世界観があります。青空文庫では、他にも「赤いろうそくと人魚」「野ばら」「遠くで鳴る雷」など、たくさんの小川未明の作品を読むことができます。この機会に、お気に入りの作品を探してみてはいかがでしょうか。(司書C)

読了目安:30分以内

「杜子春」芥川龍之介著星2つ

主人公の杜子春は、全財産を使い果たし途方に暮れていると、一人の仙人が現れます。仙人の助けで大金を手に入れた杜子春ですが、贅沢三昧をし、また無一文に戻ってしまいます。すると今まで優しかった人たちも態度が変わり、皆離れてしまいます。人々の無情さに愛想が尽きた杜子春は、今度は仙人の力を手に入れたいと思い、仙人に弟子入りを志願します。すると「私が帰ってくるまで、何が起ころうと決してしゃべってはいけない。約束を守れば弟子にしてやろう。」と言って、仙人は飛び去ってしまいます。はたして杜子春はひとこともしゃべらずに約束を守ることはできるのでしょうか...。
この物語は、中国の伝奇小説を芥川龍之介が翻案した短編小説で、原作と比べると大分アレンジされています。私たち人間にとって、財産や名誉だけではない、本当の幸せとは何かを説いてくれる名作です。(司書R)

読了目安:30分以内

「トロッコ」芥川龍之介著星2つ

表紙

『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫
(「トロッコ」収録)

『トロッコ』は、大正11年(1922)に発表された短編小説です。
主人公の8歳の少年・良平は、鉄道敷設工事に使われるトロッコに興味を持っていました。ある日、良平は若い二人の土工を手伝ってトロッコを押します。日が暮れ始め帰り道が心配になってきたころ、良平は帰ることを勧められ、暗い道を一人で帰るという、とてもシンプルなストーリーです。
この短いストーリーの中に、トロッコを押すわくわく、どこまで行くのだろうという戸惑い、日暮れの道を一人で駆ける不安など、良平のさまざまな感情が詰め込まれています。
近代文学に興味はあるけれど、少しとっつきにくい・・・そんなあなた!芥川竜之介の短編小説からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。(司書J)

読了目安:30分以内

「夏の花」原民喜著星3つ

表紙

『夏の花・心願の国』新潮文庫

広島に原爆が投下された1945年8月6日からの数日間が、静かな文章でつづられている。著者は被爆した家から避難所までの道すがら、ノートにその様子を記録していた。その自らの被爆体験をもとに惨劇を再現している。
一瞬のうちに壊滅した市街。破壊、叫び、匂い、真夏の陽射し、乾き。自らの目で見たことが細やかな筆致で淡々と描かれている。その客観的な描写が、読み手の五感に訴える。
未曾有の被爆体験を書き残す、という強い意志が感じられる。戦争を知らないわれわれの世代は、次の時代に何が残せるだろう。この作品を読むことで、考え続ける一助としたい。
「夏の花」は『夏の花』三部作の一つ。いずれも短編なので「壊滅の序曲」「廃墟から」も併せて読んでほしい。(司書P)

読了目安:1時間以内

「人間椅子」江戸川乱歩著星3つ

表紙

『江戸川乱歩全集 第1巻』
光文社文庫(「人間椅子」収録)

「奥様、奥様の方では、少しも御存じのない男から、突然、此様な無躾な御手紙を、差上げます罪を、幾重にもお許し下さいませ。」
ある日、美しい閨秀作家(女性作家)である主人公の元に、何枚もの原稿用紙を束ねた手紙が届きます。手紙の主は椅子職人の男であり、自分が犯した「罪」を告白します。男はかつて、人間が一人入れる空間のある椅子を作って中へ入り、そこへ腰掛けた女性の感触を楽しんでいました。この「人間椅子」、外資系ホテルを経て、今はある役人の邸宅に置かれています。男はその家の御夫人に、椅子越しの恋をしてしまったと云うのです。さて、この手紙を、なぜ主人公が受け取ったのか......。
「オチがすごい話」として有名で、発表から100年近く経った今でも映画化や漫画化がされていますが、原作の持つ繊細で淫靡な雰囲気は、文章でこそ味わえます。耽美主義を奉ずる乱歩の、美しく翳の在る文章を、この機会にぜひご堪能ください。(司書M)

読了目安:1時間以内

「人間失格」太宰治著NEW星3つ

幼少期から人間の営みがわからず、人間を極度に恐れていた。そこで選んだのが、道化を演じて人間と繋がることだった。このような手記を書いた男の写真が3葉あった。子供時代のものは薄気味悪く、学生時代のものは生きている感じが無く、もう1葉は奇怪で不吉な匂いのする写真だった。
『TAMA selection 高校生のためのおすすめ本200冊』より)

読了目安:1時間以上

「春と修羅」宮沢賢治著星3つ

「シン・ゴジラ」という映画を見た人は、その冒頭、無人のボートに『春と修羅』がおかれていたことに気づいたでしょうか。映画でゴジラ誕生の謎のヒントとして使われたこの本は、宮沢賢治の生前に唯一刊行された詩集です。
タイトルとなっている詩「春と修羅」で、主人公は「おれはひとりの修羅なのだ」と独白します。修羅とは、仏教の世界観で激しい感情や怒り、争いなど、穏やかさや優しさと正反対の意味を持つ世界とされています。
賢治は、阿修羅の持つ激しさと怒り、そしてそれらを制御することができない苦しみに共感を覚えていたのではないでしょうか。
「シン・ゴジラ」で使われた『春と修羅』の意味を、詩を読んであなたも自分で探してみませんか。(司書K)

読了目安:1時間以上

「蜜柑」芥川龍之介著星3つ

表紙

『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫
(「蜜柑」収録)

「或曇った冬の日暮である。」の書き出しで始まる、汽車の中での出来事を描いた短編です。ごく些細なきっかけで、目に映る光景や気持ちががらっと変化する様子を見事に描写し、それまでの暗い空気や疲労と倦怠に覆われていた「私」が変化していく様子に何だかこちらもすっきりします。
あっという間に読める短いお話ですが、「ばらばらと空から降」るように落ちていく蜜柑の鮮やかな色が、読み終わった後で心に残ります。 (司書O)

読了目安:10分以内

「森の生活 ―ウォールデン―」ソロー著星3つ

19世紀アメリカの思想家・作家ソローが、27歳の時から約2年間、森の中に自分で建てた小屋に住み、一人で自給自足の暮らしを送った時の体験や思索を記録した、ノンフィクション文学の傑作です。
彼が森の中に入ったのは、自分の人生をより深く味わうためでした。そのために、彼はできるだけシンプルな生活を送ろうとします。彼が小屋の近くの池や季節の変化の中に自然の存在を感じ取り、その中で自分自身や社会のあり方を見つめ直す過程が、生き生きとした喜びとともに描かれています。
現代の私たちには、実際に一人で森の中に入っていくのは難しいことですが、それを実践した先人の声に耳を傾けてみると、何か新しい気づきがあるかもしれません。自然と共にあることのすばらしさや、人間の暮らしの原点を感じられる一冊です。(司書L)

読了目安:1時間以上

「モルグ街の殺人事件」エドガー・アラン・ポー著星3つ

推理小説が好きならば、この機会に読んでほしい作品だ。
1841年に発表された本作は、「史上初の推理小説」と言われている。「天才的な探偵と語り部」「推理に必要な情報の開示」等、その後の推理小説の基礎となる条件が詰まっている。
語り手である「私」は、天才的な分析力を持つオーギュスト・デュパンという紳士と同居している。ある日新聞に、二人暮らしの母娘が犠牲となった猟奇殺人の記事が載る。二人は奇妙な死に方をしている上に、現場は密室だったという。興味を持ったデュパンと「私」は、事件のトリックと犯人を暴くため調査を始める。
その真相は、ぜひ読んで確かめてほしい。(司書H)

読了目安:1時間以上

「屋根裏の散歩者」江戸川乱歩著星3つ

表紙

『江戸川乱歩全集 第1巻』
光文社文庫(「屋根裏の散歩者」収録)

郷田三郎は、学業も職も続かず、親の仕送りを受けて暮らしていました。遊びもその通りで、遊びという遊びは一つ残らずしてみてもこれというものがないのでした。せめて少しでも面白く暮らせないかと、下宿を転々としていたとき、郷田は引っ越したばかりの下宿の押し入れから屋根裏への入口を見つけます。異質な空間に魅力を覚えた郷田は、昼夜を問わず、暇さえあれば屋根裏を散歩して、天井の隙間から他人の秘密を盗み見ることにすっかり夢中になってしまいました。そして、ある日、郷田は虫の好かない歯医者の助手の遠藤が節穴の真下で口を開けて眠っているのを見ているうちに、天井裏の穴から毒をたらせば殺せるのではないかと考えついて・・・。
名探偵・明智小五郎も登場する乱歩の代表作の一つです。(司書G)

読了目安:1時間以上

「藪の中」芥川龍之介著星3つ

「真相は藪の中」という言葉を聞いたことはありますか?当事者たちの言うことが食い違うなどして、真相がわからないという意味です。この作品は、まさにその状態を表した話になります。
ある日、藪の中で男の死体が見つかりました。きこりや、旅法師、男を殺した容疑者、男の妻、さらには巫女の口を借りて話す殺された男など、7人の男女が事件について証言します。しかし、すべての証言を合わせると矛盾が生じてしまいます。誰が本当のことを言っているのかもわからず話は終わり、真相は藪の中。あなたは、この謎を解き明かすことができますか?
文量もそれほど多くないので、普段あまり本を読まない人にもおすすめの作品です。(司書G)

読了目安:30分以内

「雪の女王」アンデルセン著星1つ

「雪の女王」と聞くと、ディズニーのアニメを思いだす人が多いと思います。アニメのもとになった本を書いたのはアンデルセンという人ですが、本とアニメはほとんど別の作品と言えるくらい違っています。
この本の主人公は、ゲルダという女の子です。 ある日、ゲルダの親友のカイという男の子が、雪の女王にさらわれてしまいます。ゲルダはカイを探すために、一人で旅に出ます。雪の女王の城まではとても長い道のりですが、優しい人や動物に助けられて、ゲルダは少しずつ進んでいきます。
ゲルダは、カイを見つけることができるでしょうか。(司書H)

読了目安:1時間以上

「夢十夜」夏目漱石著NEW星3つ

この世のものとは思えない美しいものも、不条理な出来事も、夢の中では不思議とそのまま受け入れられてしまう。100 年の時を待ち続けたり、大昔の戦場で捕まったり、数えきれない豚に襲われたり...。10 の夢を描いた短編小説。
『TAMA selection 高校生のためのおすすめ本200冊』より)

読了目安:1時間以内

「ラプンツェル」グリム兄弟著星1つ

ディズニー映画に登場するプリンセスの中でも特に人気が高いラプンツェル。愛らしいしぐさや好奇心旺盛な行動は多くの人を魅了しました。さて、映画「搭の上のラプンツェル」と原作のグリム童話「ラプンツェル」ではかなりストーリーも登場人物も違うのをご存知ですか?映画は見たけれど、オリジナルは読んだことがないという人は是非、この機会に読んでみて。とても短いお話なのですが、ラプンツェルの大波乱の人生は映画以上にスリリングです。
映画やアニメになった作品が原作と違うことは結構ありますよね。青空文庫からあなたが知っているタイトルの作品を拾って読むこともオススメします。「あれ、自分が知っていた内容と違うぞ」という発見は新鮮で楽しいものですよ。(司書F)

読了目安:30分以内

著者名順

芥川龍之介著「杜子春」星2つ

主人公の杜子春は、全財産を使い果たし途方に暮れていると、一人の仙人が現れます。仙人の助けで大金を手に入れた杜子春ですが、贅沢三昧をし、また無一文に戻ってしまいます。すると今まで優しかった人たちも態度が変わり、皆離れてしまいます。人々の無情さに愛想が尽きた杜子春は、今度は仙人の力を手に入れたいと思い、仙人に弟子入りを志願します。すると「私が帰ってくるまで、何が起ころうと決してしゃべってはいけない。約束を守れば弟子にしてやろう。」と言って、仙人は飛び去ってしまいます。はたして杜子春はひとこともしゃべらずに約束を守ることはできるのでしょうか...。
この物語は、中国の伝奇小説を芥川龍之介が翻案した短編小説で、原作と比べると大分アレンジされています。私たち人間にとって、財産や名誉だけではない、本当の幸せとは何かを説いてくれる名作です。(司書R)

読了目安:30分以内

芥川龍之介著「トロッコ」星2つ

表紙

『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫
(「トロッコ」収録)

『トロッコ』は、大正11年(1922)に発表された短編小説です。
主人公の8歳の少年・良平は、鉄道敷設工事に使われるトロッコに興味を持っていました。ある日、良平は若い二人の土工を手伝ってトロッコを押します。日が暮れ始め帰り道が心配になってきたころ、良平は帰ることを勧められ、暗い道を一人で帰るという、とてもシンプルなストーリーです。
この短いストーリーの中に、トロッコを押すわくわく、どこまで行くのだろうという戸惑い、日暮れの道を一人で駆ける不安など、良平のさまざまな感情が詰め込まれています。
近代文学に興味はあるけれど、少しとっつきにくい・・・そんなあなた!芥川竜之介の短編小説からチャレンジしてみてはいかがでしょうか。(司書J)

読了目安:30分以内

芥川龍之介著「蜜柑」星3つ

表紙

『蜘蛛の糸・杜子春』新潮文庫
(「蜜柑」収録)

「或曇った冬の日暮である。」の書き出しで始まる、汽車の中での出来事を描いた短編です。ごく些細なきっかけで、目に映る光景や気持ちががらっと変化する様子を見事に描写し、それまでの暗い空気や疲労と倦怠に覆われていた「私」が変化していく様子に何だかこちらもすっきりします。
あっという間に読める短いお話ですが、「ばらばらと空から降」るように落ちていく蜜柑の鮮やかな色が、読み終わった後で心に残ります。 (司書O)

読了目安:10分以内

芥川龍之介著「藪の中」星3つ

「真相は藪の中」という言葉を聞いたことはありますか?当事者たちの言うことが食い違うなどして、真相がわからないという意味です。この作品は、まさにその状態を表した話になります。
ある日、藪の中で男の死体が見つかりました。きこりや、旅法師、男を殺した容疑者、男の妻、さらには巫女の口を借りて話す殺された男など、7人の男女が事件について証言します。しかし、すべての証言を合わせると矛盾が生じてしまいます。誰が本当のことを言っているのかもわからず話は終わり、真相は藪の中。あなたは、この謎を解き明かすことができますか?
文量もそれほど多くないので、普段あまり本を読まない人にもおすすめの作品です。(司書G)

読了目安:30分以内

アンデルセン著「雪の女王」星1つ

「雪の女王」と聞くと、ディズニーのアニメを思いだす人が多いと思います。アニメのもとになった本を書いたのはアンデルセンという人ですが、本とアニメはほとんど別の作品と言えるくらい違っています。
この本の主人公は、ゲルダという女の子です。 ある日、ゲルダの親友のカイという男の子が、雪の女王にさらわれてしまいます。ゲルダはカイを探すために、一人で旅に出ます。雪の女王の城まではとても長い道のりですが、優しい人や動物に助けられて、ゲルダは少しずつ進んでいきます。
ゲルダは、カイを見つけることができるでしょうか。(司書H)

読了目安:1時間以上

エドガー・アラン・ポー著「モルグ街の殺人事件」星3つ

推理小説が好きならば、この機会に読んでほしい作品だ。
1841年に発表された本作は、「史上初の推理小説」と言われている。「天才的な探偵と語り部」「推理に必要な情報の開示」等、その後の推理小説の基礎となる条件が詰まっている。
語り手である「私」は、天才的な分析力を持つオーギュスト・デュパンという紳士と同居している。ある日新聞に、二人暮らしの母娘が犠牲となった猟奇殺人の記事が載る。二人は奇妙な死に方をしている上に、現場は密室だったという。興味を持ったデュパンと「私」は、事件のトリックと犯人を暴くため調査を始める。
その真相は、ぜひ読んで確かめてほしい。(司書H)

読了目安:1時間以上

江戸川乱歩著「人間椅子」星3つ

表紙

『江戸川乱歩全集 第1巻』
光文社文庫(「人間椅子」収録)

「奥様、奥様の方では、少しも御存じのない男から、突然、此様な無躾な御手紙を、差上げます罪を、幾重にもお許し下さいませ。」
ある日、美しい閨秀作家(女性作家)である主人公の元に、何枚もの原稿用紙を束ねた手紙が届きます。手紙の主は椅子職人の男であり、自分が犯した「罪」を告白します。男はかつて、人間が一人入れる空間のある椅子を作って中へ入り、そこへ腰掛けた女性の感触を楽しんでいました。この「人間椅子」、外資系ホテルを経て、今はある役人の邸宅に置かれています。男はその家の御夫人に、椅子越しの恋をしてしまったと云うのです。さて、この手紙を、なぜ主人公が受け取ったのか......。
「オチがすごい話」として有名で、発表から100年近く経った今でも映画化や漫画化がされていますが、原作の持つ繊細で淫靡な雰囲気は、文章でこそ味わえます。耽美主義を奉ずる乱歩の、美しく翳の在る文章を、この機会にぜひご堪能ください。(司書M)

読了目安:1時間以内

江戸川乱歩著「屋根裏の散歩者」星3つ

表紙

『江戸川乱歩全集 第1巻』
光文社文庫(「屋根裏の散歩者」収録)

郷田三郎は、学業も職も続かず、親の仕送りを受けて暮らしていました。遊びもその通りで、遊びという遊びは一つ残らずしてみてもこれというものがないのでした。せめて少しでも面白く暮らせないかと、下宿を転々としていたとき、郷田は引っ越したばかりの下宿の押し入れから屋根裏への入口を見つけます。異質な空間に魅力を覚えた郷田は、昼夜を問わず、暇さえあれば屋根裏を散歩して、天井の隙間から他人の秘密を盗み見ることにすっかり夢中になってしまいました。そして、ある日、郷田は虫の好かない歯医者の助手の遠藤が節穴の真下で口を開けて眠っているのを見ているうちに、天井裏の穴から毒をたらせば殺せるのではないかと考えついて・・・。
名探偵・明智小五郎も登場する乱歩の代表作の一つです。(司書G)

読了目安:1時間以上

小川未明著「赤い蝋燭と人魚」星2つ

北の海に女の人魚が棲んでいた。冷たくて暗い海で暮らすことがたまらなく、お腹の中の赤ん坊には人間の町で暮らしてほしいと願った。ある夜、女が産み落とした赤ん坊はろうそく屋の老夫婦に拾われ、美しい娘に成長する。娘が、赤い絵具で描いたろうそくの燃えさしを身につけると、どんな大暴風雨でもおぼれて死ぬようなことはないといううわさが広まった。このことを聞きつけた香具師が、娘を売ってくれるよう老夫婦に頼みに来る。初めは断った老夫婦だったが...。
大正10(1921)年、新聞に連載された小説。作者の小川未明は、新潟県の雁子浜(がんこはま)に伝わる人魚伝説から発想を得たと言われている。読み始めると、心の中に不思議な世界がぽかんと浮かんでくる。読んでみてください。(司書B)

読了目安:30分以内

小川未明著「月夜とめがね」星1つ

表紙

『小川未明童話集』新潮文庫
(「月夜とめがね」収録)

ある月のきれいな夜のこと、針仕事をしていたおばあさんのところに、めがね売りがやってきます。ちょうど目がかすんでこまっていたおばあさんは、「なんでもよく見えることうけあい」のめがねを一つ買いました。しばらくすると、今度は、指をけがした女の子がやってきました。ところが、買ったばかりのめがねをかけて見てみると――。
小川未明の作品はショートショートのような短いものも多いですが、独特な世界観があります。青空文庫では、他にも「赤いろうそくと人魚」「野ばら」「遠くで鳴る雷」など、たくさんの小川未明の作品を読むことができます。この機会に、お気に入りの作品を探してみてはいかがでしょうか。(司書C)

読了目安:30分以内

グリム兄弟著「ラプンツェル」星1つ

ディズニー映画に登場するプリンセスの中でも特に人気が高いラプンツェル。愛らしいしぐさや好奇心旺盛な行動は多くの人を魅了しました。さて、映画「搭の上のラプンツェル」と原作のグリム童話「ラプンツェル」ではかなりストーリーも登場人物も違うのをご存知ですか?映画は見たけれど、オリジナルは読んだことがないという人は是非、この機会に読んでみて。とても短いお話なのですが、ラプンツェルの大波乱の人生は映画以上にスリリングです。
映画やアニメになった作品が原作と違うことは結構ありますよね。青空文庫からあなたが知っているタイトルの作品を拾って読むこともオススメします。「あれ、自分が知っていた内容と違うぞ」という発見は新鮮で楽しいものですよ。(司書F)

読了目安:30分以内

ゴーゴリ著「外套」星3つ

表紙

『外套・鼻』ゴーゴリ著,平井肇訳
岩波書店

ロシアの文豪といえばドストエフスキーやトルストイが有名ですが、そのドストエフスキーが「私たちはみんなゴーゴリの外套の中から出てきた」と言った、という伝説のある作品(あくまで伝説です)。1843年(天保14年、日本がまだ鎖国していた頃)に発表された小説なのに、世界の作家たちに今も影響を与え続けています。
主人公は、アカーキイ・アカーキエウィッチという変な名前のさえない公務員。作品の名前になっている「外套」(がいとう)とはコートのことで、ロシアの寒い冬にはかかせないものですが、彼の外套はつぎはぎだらけ。それで、一大決心をして新しい外套を作る、という話です。それのどこが面白いのか?ぜひ、実際に読んでみてください。家にいながらにして、ロシアの雰囲気を感じられる作品です。
ちなみに、芥川龍之介の「芋粥」(いもがゆ)は、この作品に似ているといわれます。ゴーゴリには「鼻」という作品もありますが、これも芥川龍之介の「鼻」とよく似ている、といわれます。どれも青空文庫で読めるので、読み比べてみるのも面白いかも。(司書L)

読了目安:1時間以上

ゴーチェ著「クラリモンド」
(岡本綺堂訳「世界怪談名作集」所収)
星3つ

聖職者ロミュオーの美女クラリモンドへのかなわぬ恋。彼らを引き裂くのは信仰、そして彼女自身の死。しかし彼女は再びよみがえり、二人はヴェニスで絢爛豪奢な生活を送るようになります。
これは夢なのか、現実なのか。2つの世界を行き来するロミュオーはある夜、愛を誓いながら泣くクラリモンドに血を吸われ、彼女が吸血鬼であることに気づいてしまいますが・・・。
『死霊の恋』のタイトルでも知られる本作は19世紀フランスの詩人ゴーチェによる短編小説。文章から色彩豊かに浮かび上がる幻想的な世界は、当時の音楽やバレエに多くのインスピレーションを与えました。また、ゴーチェが台本を執筆したバレエ「ジゼル」はとても有名です。
若さゆえに惹きつけられる「この世ならぬもの」の美や愛の形がここにはあります。10代だけの特権で、感じるままに味わっていただければと思います。(司書S)

読了目安:1時間以上

ソロー著「森の生活 ―ウォールデン―」星3つ

19世紀アメリカの思想家・作家ソローが、27歳の時から約2年間、森の中に自分で建てた小屋に住み、一人で自給自足の暮らしを送った時の体験や思索を記録した、ノンフィクション文学の傑作です。
彼が森の中に入ったのは、自分の人生をより深く味わうためでした。そのために、彼はできるだけシンプルな生活を送ろうとします。彼が小屋の近くの池や季節の変化の中に自然の存在を感じ取り、その中で自分自身や社会のあり方を見つめ直す過程が、生き生きとした喜びとともに描かれています。
現代の私たちには、実際に一人で森の中に入っていくのは難しいことですが、それを実践した先人の声に耳を傾けてみると、何か新しい気づきがあるかもしれません。自然と共にあることのすばらしさや、人間の暮らしの原点を感じられる一冊です。(司書L)

読了目安:1時間以上

太宰治著「お伽草紙」星3つ

『お伽草紙』は、だれでも知っているお伽話を作家の太宰治が巧みに料理し、創作した物語集だ。浦島太郎はお爺さんになって本当に不幸だったのか?カチカチ山のタヌキはなぜあんなにも酷い仕打ちを受けねばならなかったのか?そんな疑問のもと、収録作品は実にユーモラスに、毒気たっぷりに創作されている。
また、本作は敗戦直後に刊行された。新たな文学作品が発表されることはほとんどなかった混乱した状況の中で、太宰はどのような思いで本作を執筆したのか。そんなことも頭の片隅に置きながら、太宰の創る物語を楽しんでみよう。(司書W)

読了目安:1時間以上

太宰治著「困惑の弁」星3つ

表紙

『太宰治全集 10』筑摩書房
(「困惑の弁」収録)

太宰先生、小説家を目指す人に向けて、アドバイスをお願いします。そんな依頼を受けた太宰治による、困惑しながらの忠告です。「カフェに行って、お金を乱費してはいけない」「必ず腹巻をしなければならない」「恋は、必ず片恋のままで、かくして置け」。妙に具体的なありがたいお言葉に、小説家になれるかどうかはわかりませんが、太宰が好きになります。とても短いので、箸休めにどうぞ。(司書E)

読了目安:30分以内

太宰治著「女生徒」星3つ

「いやだ、いやだ。朝の私は一ばん醜い。」朝起きてから眠るまでの一日が、少女の独白で語られます。
家に来る上品ぶった夫婦や外面のよい母親に、むかむかして、泣きたい気持ちになるけれど、私はうれしそうな顔をして見せるのです。
妄想したり、落ち込んだり、目まぐるしく変わる私のつぶやきに、思わず共感してしまいます。30歳になる太宰が、女子学生になりきって描いたユニークな短編小説です。(司書D)

読了目安:1時間以上

太宰治著「人間失格」NEW星3つ

幼少期から人間の営みがわからず、人間を極度に恐れていた。そこで選んだのが、道化を演じて人間と繋がることだった。このような手記を書いた男の写真が3葉あった。子供時代のものは薄気味悪く、学生時代のものは生きている感じが無く、もう1葉は奇怪で不吉な匂いのする写真だった。
『TAMA selection 高校生のためのおすすめ本200冊』より)

読了目安:1時間以上

種田山頭火著「草木塔」星3つ

表紙

『現代日本文學大系 95 現代句集』
筑摩書房(「草木塔」収録)

「分け入つても分け入つても青い山」の句はこの本に収められています。山頭火は漂泊の俳人と呼ばれていますね。確かに「この旅、果もない旅のつくつくぼうし」や「月が昇つて何を待つでもなく」を読むと、一人で旅をしている、ちょっと寂しげな、草や木や虫の中に溶け込んでいるような様子が分かります。
山頭火はどんな青い山を歩いたのでしょうか?私は、初夏の林間を汗をかきながら歩いている時に、さーっと流れてくる涼風に吹かれるとこの句を思い出します。
あなたの青い山はどんな山でしょうか?(司書U)

読了目安:1時間以内

陳寿著「魏志倭人伝」星5つ(超高難易度)

女王卑弥呼が統べる国、邪馬台国。3世紀には日本列島にあったという。所在地は今も謎だ。邪馬台国について、文字で記録されているのが、古代中国・魏という国の歴史書の一部分、『魏志倭人伝』だ。
倭人伝の記述の始まりは、「倭人在帯方東南大海之中、」。全て漢字で書かれている。だから、一文字ずつ、コツコツと読み解いてみよう。そして推理してみよう。邪馬台国は列島のどこにあったのか? 卑弥呼はどんな人だったのか?(司書Z)

読了目安:1時間以上(漢文です。)

寺田寅彦著「科学に志す人へ」星3つ

物理学者・随筆家として著名な筆者が、自身の三十年前の学生生活を振り返った随筆。
当時教程として教わったことがのちにそのままで役に立ったのはわずかである、と感じるのは思い違いだと述べています。それがなければ学究生活の第一歩さえままならず、やはり大事なものであったのだと回想しています。
みなさんが「今勉強していることは将来に必要なのだろうか」と思ったとき、読んでみてはいかがでしょうか。(司書T)

読了目安:10分以内

中勘助著「銀の匙」NEW星3つ

こ小箱の中の銀の匙は、ひ弱だった私に薬を飲ませるため、叔母さんが持ってきてくれたものだ。和泉町のお稲荷さんは叔母さんに背負われ出かけた所。玩具の小犬と牛は私のたった二人の友達だった。著者の幼い日の喜びや恐れがちりばめられた自伝小説。
『TAMA selection 高校生のためのおすすめ本200冊』より)

読了目安:1時間以上

中島敦著「山月記」星3つ

表紙

『李陵・山月記』新潮文庫

「ローセーノリチョーワハクガクサイエイ・・・」高校で覚えた冒頭の一文は今でもソラで唱えられる、そんな大人は多いかもしれません。
己れの詩才を自負する余り、世に受け入れられない絶望の中で虎と化した李徴。旧友に再会してことの顛末を語るのですが、人語を話す虎の悲哀と滑稽、その後の李徴は虎として生きたのか人として死んだのか、刺さったとげのようにいつまでも気にかかる物語です。
未だ何者でもないが何者かでありたいと焦る、作中でいう「臆病な自尊心」でいっぱいの高校生だったからこそ、この短い物語が身に染みたのかも。今でも同期会の席上では、誰かがこの冒頭を唱え出すと皆がそれに続くという、私たちの伝説の物語。ぜひナレーション風に重々しく読み上げて、詩情豊かな文体をお楽しみください。(司書A)

読了目安:30分以内

夏目漱石著「硝子戸の中」星3つ

表紙

『夏目漱石全集 10』ちくま文庫
筑摩書房(「硝子戸の中」収録)

「硝子戸の中にじっと坐っている私なぞはちょっと新聞に顔が出せないような気がする。私が書けば政治家や軍人や実業家や相撲狂を押し退けて書く事になる。」とほとんど外出しなかった当時に身近に起きた出来事について書かれた随筆です。手紙や来客とのやりとりで、漱石の人との関係や考え方がわかり興味深く読めます。
また、知人や犬の死の回想、身の上話をした女の客から小説を書く場合「女が死ぬ方がいいとお思いになりますか、それとも生きているようにお書きになりますか」と問われたことなど死に関する記述も多く、漱石の死生観がわかる作品です。(司書V)

読了目安:1時間以上

夏目漱石著「自転車日記」星3つ

イギリスに留学中の夏目漱石。下宿屋のおばあさんが言うことには「自転車に御乗んなさい」。「ああ悲(かなし)いかなこの自転車事件たるや」、漱石と自転車との格闘が始まります。自転車にしがみついた漱石は、無事に坂道を駆け下りることができるのか?
一見難しい文章ですが、よく読むと抱腹絶倒のエッセイです。文豪を身近に感じられること間違いなし!(司書E)

読了目安:30分以内

夏目漱石著「それから」星3つ

表紙

『それから』新潮文庫

主人公の長井代助はもうすぐ30才になろうかという、いわゆる高等遊民。大学を卒業した後は、職業には就かず、結婚もせず、実家から毎月の生活資金を得て暮らしています。
そんな代助の暮らしに転機が訪れます。3年前に関西へ見送った平岡夫妻が、職を失い帰京したのです。何かと夫妻の世話を焼くうちに代助は、平岡の妻三千代への愛が甦ります。かつて代助は、三千代に好意を持ちながら、友情のため二人の結婚のため尽力したのでした。
折しも実家の父からは縁談を強く勧められ、断れば生活費の援助も失うかもしれない、平岡に本当のことを話せば友情を失うかもしれない、2つの渦に代助は巻き込まれていきます。
最終的に代助は実家と友人と別れ、職業を得て三千代と生きていこうと決意します。あなたは代助をどう思うでしょうか。(司書I)

読了目安:1時間以上

夏目漱石著「夢十夜」NEW星3つ

この世のものとは思えない美しいものも、不条理な出来事も、夢の中では不思議とそのまま受け入れられてしまう。100 年の時を待ち続けたり、大昔の戦場で捕まったり、数えきれない豚に襲われたり...。10 の夢を描いた短編小説。
『TAMA selection 高校生のためのおすすめ本200冊』より)

読了目安:1時間以内

原民喜著「夏の花」星3つ

表紙

『夏の花・心願の国』新潮文庫

広島に原爆が投下された1945年8月6日からの数日間が、静かな文章でつづられている。著者は被爆した家から避難所までの道すがら、ノートにその様子を記録していた。その自らの被爆体験をもとに惨劇を再現している。
一瞬のうちに壊滅した市街。破壊、叫び、匂い、真夏の陽射し、乾き。自らの目で見たことが細やかな筆致で淡々と描かれている。その客観的な描写が、読み手の五感に訴える。
未曾有の被爆体験を書き残す、という強い意志が感じられる。戦争を知らないわれわれの世代は、次の時代に何が残せるだろう。この作品を読むことで、考え続ける一助としたい。
「夏の花」は『夏の花』三部作の一つ。いずれも短編なので「壊滅の序曲」「廃墟から」も併せて読んでほしい。(司書P)

読了目安:1時間以内

宮沢賢治著「オツベルと象」星2つ

表紙

『新編銀河鉄道の夜』新潮文庫
(「オツベルと象」収録)

教科書にも掲載された賢治の寓話ですが、読み終わるとたくさんの「もしもこうだったらどうなったの?」がうかんできます。「もしオツベルが象をかわいがったら?」「もし象が白象じゃなかったら?」「もしオツベルが貧乏だったら?」結末はどうなったでしょうか。
賢治は作品にずっと手を入れ続けたことで知られていて、『銀河鉄道の夜』は4種類の原稿が残っています。原稿が残っていないこの作品、賢治になったつもりで別のストーリーを考えてみませんか?(司書N)

読了目安:30分以内

宮沢賢治著「グスコーブドリの伝記」星2つ

イーハトーヴの大きな森に両親と妹と暮らしていた少年、グスコーブドリのお話。
ブドリが10歳になった年、イーハトーヴはひどい寒波に襲われた。夏が来ても暑くならず、麦に実がつかない。とうとう食べ物は底をつき、ブドリの家族はちりぢりになってしまった。沼ばたけで働き始めたブドリは、仕事の合間に、作物がよく育つための方法を書いたクーボー先生の本を読んだ。
それからも、寒波や干ばつはやってきた。ブドリは作物を守る方法を見つけたいと、クーボー先生の学校を訪ねる。 このお話には農学校で教師をした宮沢賢治の、気候や植物についての知識が詰まっている。ブドリがどんな方法を見つけるか、確かめてみてほしい。(司書Y)

読了目安:1時間以上

宮沢賢治著「セロ弾きのゴーシュ」星1つ

表紙

『新編銀河鉄道の夜』新潮文庫
(「セロ弾きのゴーシュ」収録)

金星音楽団でゴーシュは、セロ(チェロ)を弾いています。仲間の楽手のなかではどうやら一番下手らしく、楽長にはいつも叱られてばかりです。
演奏会が近づいて、ゴーシュは家でも虎みたいな勢いでセロの練習をしていました。そうして、夜中を過ぎたころ、誰かが扉をとんとんと叩きました。入ってきたのは重そうにトマトを抱えたねこです。ねこはにやにやわらって「トロメライをひいてごらんなさい。きいてあげますから」と言いました。ゴーシュは「生意気だ、生意気だ、生意気だ。」と腹を立て、嵐のような勢いで「印度の虎狩」を弾き始めました...。
演奏会までにゴーシュのセロは上達するのでしょうか?動物たちとがんばるゴーシュの姿に元気をもらえます。(司書X)

読了目安:1時間以内

宮沢賢治著「注文の多い料理店」星1つ

表紙

『注文の多い料理店』
新潮文庫

二人の太った若い紳士が山奥に狩りにやってきました。道に迷った二人の前に現れた、立派な西洋料理店「山猫軒」は、なぜだかとても「注文の多い」料理店です。「ここで髪をきちんとして、それからはきものの泥を落してください」、「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」――。はたして二人は料理にありつけるのでしょうか。
情景が目に浮かぶような生き生きとした文章で、すぐ読めて、クスリと笑えるお話です。
宮沢賢治の作品は、他にも青空文庫でたくさん読むことができます。学校の授業で触れた人も多いかと思いますが、この機会にぜひ、じっくり読んでみませんか?(司書C)

読了目安:30分以内

宮沢賢治著「春と修羅」星3つ

「シン・ゴジラ」という映画を見た人は、その冒頭、無人のボートに『春と修羅』がおかれていたことに気づいたでしょうか。映画でゴジラ誕生の謎のヒントとして使われたこの本は、宮沢賢治の生前に唯一刊行された詩集です。
タイトルとなっている詩「春と修羅」で、主人公は「おれはひとりの修羅なのだ」と独白します。修羅とは、仏教の世界観で激しい感情や怒り、争いなど、穏やかさや優しさと正反対の意味を持つ世界とされています。
賢治は、阿修羅の持つ激しさと怒り、そしてそれらを制御することができない苦しみに共感を覚えていたのではないでしょうか。
「シン・ゴジラ」で使われた『春と修羅』の意味を、詩を読んであなたも自分で探してみませんか。(司書K)

読了目安:1時間以上

夢野久作著「創作人物の名前について」星2つ

小説には必ずと言っていいほど出てくる、登場人物の名前。そんな名前選びについて書いた夢野久作のエッセイがあります。
久作にとって名前選びは、子どもの名前や自身のペンネームをつけるよりも苦心することだったようで、久作流四つの条件を挙げて、その悩ましさを語っています。
「悪人の名前にウッカリ実在の名前を使うと、その名前の人は作者に対して報復のしようのない怨恨を抱くおそれがある」など、ありえなくはないかもしれないが考えすぎでは...と思ってしまうような悩みを抱いていたようです。
どんな名前で、どんな性格の登場人物が出てくるのか、いつもとは違った視点で小説を読みたくなるかも。(司書Q)

読了目安:30分以内

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