企画展示「みんなの積ん読展」ランキング
2023年3月13日
みんなの積ん読ランキング
Web、SNS、館内投票から計375票が集まりました。 ランキングとともに、みなさんが積ん読してしまった理由や、読んだ図書館員からのアドバイスを掲載しています。
第1位 『失われた時を求めて』マルセル・プルースト著
1913年から1927年に渡り刊行された、フランスの作家マルセル・プルーストの小説です。完訳された岩波文庫版は全14冊に分けて刊行されています。二十世紀を代表する長編小説のひとつとも言われる作品です。2022年はプルースト没後100年にあたります。
『失われた時を求めて 1〜14』プルースト作 吉川一義 訳 岩波書店 2010.11
ある冬の寒い日。熱い紅茶に浸したマドレーヌを口にした瞬間、幼少期を過ごしたコンブレーでの記憶が蘇っていく......。
語り手である「私」の少年時代の思い出から晩年まで、「私」の人生のすべてを描いた大長編小説。
みんなの声
読もうと思いながら、紅茶にマドレーヌを浸して......が催眠効果につながり、寝落ちしてます。
読んだ図書館員の声
読了には3か月かかりました。
この作品では、だいたいは語り手「私」による描写および思索が、物語の進行に優先されます。詩的で美しい情景描写や、かけ離れていそうでぴったりの比喩にうならされることもあれば、観察され分析される人間像に個性と普遍性を見出しておもしろく感じることもありました。「私」の観察眼や、事象を掘り下げ書き表さずにはいられない習性を受け入れられれば、読み進めやすいかもしれません。
読むほどに、作品全体のうねりや特定のテーマのリフレインが見えて来るのには感慨を覚えました。飽かず変奏される恋愛のモチーフには、私はちょっとあきれましたが、それも本作品らしさの一つなのでしょうか。読み始めた方には、せっかくなら最終篇の文学論や時間論・追憶論までぜひたどり着いていただきたいと思ってしまいました。
訳書によっては、注釈や登場人物一覧、場面索引等があり、現代日本の一般読者にも親切です。
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第2位 『ユリシーズ』ジェイムズ・ジョイス著
1位の『失われた時を求めて』に続いて、2位も長編小説がランクインしました。2022年は『ユリシーズ』出版から100年目にあたります。
『ユリシーズ 1~3』ジェイムズ・ジョイス著 丸谷才一訳, 永川玲二訳, 高松雄一訳 集英社 1996.6
Ulysses James Joyce. David Campbell, 1992.
詩人の青年スティーブン・ディーダラスとアラフォーの広告屋レオポルド・ブルームを中心に、アイルランドの首都ダブリンの夏の一日を、神話『オデュッセイア』になぞらえて描く全18章。聖、俗、青春、猥褻、宗教、政治、差別すべてをはらんだ、実験的で言葉遊びに満ちた小説です。
みんなの声
四半世紀経つも積ん読のまま。もはや老後の宿題です。
読み始めて、めまいがして休憩中です。ダブリンで迷子になりそうです。
読んだ図書館員の声
集英社版の単行本で読んだのですが、注釈・解説も併せて読むと約50時間かかりました。はっきり言って読むのは大変ですが、我慢して8割くらい読んだところで面白くなってきます。3巻の巻末に主要人物一覧があるので必要な時に参照してください。桑田佳祐の歌詞が好きな人におすすめしたいです。
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第3位 『かがみの孤城』辻村深月著(※同票5作品)
2018年度の本屋大賞を受賞したミステリーファンタジーです。ベスト3内で唯一の日本で出版された作品かつ、最も新しい作品です。 2022年12月に映画化されるため、注目を集めています。
『かがみの孤城』 辻村深月著 ポプラ社 2017.5
学校での居場所をなくし不登校だった中学生のこころ。ある日、突然光り出した自分の部屋の鏡をくぐると、そこにはお城のような建物が。招待主は狼のお面をかぶった不思議な少女"オオカミさま"。こころは、同じく招待された少年少女たちと出会い、城に隠されている"願いの叶う鍵"を探し始めるが......。7人が集められた理由、城の秘密、オオカミさまの正体、そして願いの叶う鍵とはなんなのか。
みんなの声
学校が苦手だった人にこそ読んで欲しいとか、最終的には救われると聞いて読み始めたものの、序盤から憂鬱でつらい。
評判の良い作品だから、読んだら得るものはあるのだろうとは思うのですが......。
文庫本だと上下になる長さがネック...。読んだら面白いと思うんだけど、時間がある時に一気に読みたい。
読んだ図書館員の声
1カ月ごとに章が分けられているので、自分のペースで、区切りよく読むことができます。ですが、1月の章からの怒涛の展開には、思わずページをめくる手が止まらなくなると思います。バラバラだったピースが一つになっていくような感覚が読んでいて心地よいです。
たしかに、最初の部分は辛いシーンもあるかもしれません。
ですが最後は救われます。ぜひ主人公たちの成長を見届けてほしいです。
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第3位 『レ・ミゼラブル』ヴィクトル・ユーゴー著(※同票5作品)
1862年に刊行されたフランスの長編小説です。読んだことはなくても、映画やミュージカルは観たことがある人も多いのではないでしょうか。日本では『ああ無情』という邦訳でも有名です。
『レ・ミゼラブル 1〜5』ヴィクトール・ユゴー著 西永良成訳 平凡社 2019.12
Les misérables Victor Hugo ; édition établie par Henri Scepi, avec la collaboration de Dominique Moncond'huy. Gallimard, c2018.
一本のパンを盗んだことから19年牢獄につながれたジャン・ヴァルジャン。釈放後、司教との出会いにより、改心した彼は"マドレーヌ"と名前を変え、その後市長となるが......。激動のフランスを生きた「哀れな人々」(レ・ミゼラブル)を描いた群像劇。
みんなの声
フランス語は分からないので、英語で読もうと決意してから、何年も積ん読状態に...。
『レ・ミゼラブル』のミュージカルも映画が大好きなので原作をいつか読みたいと思いつつ、長編なのでなかなか手が出ません。
読んだ図書館員の声
逃げるジャン・ヴァルジャン、追うジャヴェール。一言でいえばそうなるのかもしれませんが、読み進むとじつに多くの人物がストーリーに絡んできます。例えば悪漢テナルディエの子供たちのような「脇役」も丁寧に描かれている所が、この物語に厚みをもたらしているのだと思います。私は終わりに近づくほど夢中で読みました。
文庫だけでもいろんな訳が出ているので、どれが自分に合うか最初に試し読みするとよいかもしれません。また、実在の地名が頻繁に出てくるので、フランスとパリの地図もぜひお手元に。
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第3位 『カラマーゾフの兄弟』フョードル・ドストエフスキー著(※同票5作品)
1879年から1880年にかけて発表された、ロシアの作家ドストエフスキー最後の長編小説です。都立図書館員の積ん読ランキングでは1位の作品でした。
『詳注版カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー著 水声社 2020.1
粗野で欲望に忠実な父フョードル・カラマーゾフの暮らす街に、3兄弟が戻ってきた。粗暴で放埓な日々を送る長男ドミートリイ、シニカルな無神論者の次男イヴァン、誰からも愛される清純な三男アレクセイ。
やがて、金と一人の妖艶な美女を巡って父フョードルと長男ドミートリイが争う中、フョードルが自宅で殺害され、容疑者としてドミートリイが逮捕される。
果たして犯人は誰なのか?ロシア全土が注目した裁判が始まる......。
みんなの声
呼び名が多すぎて諦めました。読もう読もうと思っている間に、重大なネタバレをされてしまいました。
長そう......しんどそう......という気持ちに負けて、学生時代に最初の数ページを読んだっきりです。
読んだ図書館員の声
読む前に、まずは人物相関図、できれば愛称入りのものを入手しましょう。これを片手に読み進めば、誰だっけ?と何度もページを戻すこともなくなります。
登場人物たちが語る長い独白は、思い切って飛ばして後で読み返すことにし、筋を追うのに専念するのも良いかもしれません。
ロシア的キリスト教と無神論との思想の闘い、二転三転する法廷劇、一筋縄ではいかない濃厚な恋愛模様...。
一通り読んだ後はじっくりと読み返して、あなたもカラマーゾフの世界にはまりましょう!
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第3位 『罪と罰』フョードル・ドストエフスキー著(※同票5作品)
1866年に発表されたロシアの作家ドストエフスキーの長編小説です。『カラマーゾフの兄弟』に続き、二作目のドストエフスキーのランクインです。
『罪と罰 1〜3』ドストエフスキー著 亀山郁夫訳 光文社 2008.10
1865年、ペテルブルグ。頭脳明晰な青年ラスコーリニコフは、貧乏ゆえに学費を滞納し、大学を除籍になってしまう。自らを「選ばれた非凡人」であると認識する彼は、この悲惨な境遇から抜け出すため、高利貸しの強欲な老婆を殺害する。しかし、老婆だけではなく、その場に居合わせてしまった老婆の妹も殺してしまった。
心身共に疲弊したラスコーリニコフだったが、娼婦・ソーニャと出会い......。
みんなの声
小学生の頃、何故か学校の図書室にあって読んだのですが、主人公の名前が覚えられず、そもそも小学生には難しすぎて読むのを諦めました。今もう一度読みたい気持ちと、今読んでもわからなかったらどうしようの気持ちの間で揺れています。
読んだ図書館員の声
難解な長編小説という概念は捨てましょう。
最後まで目が離せない圧巻のミステリーです。
名著だけに解説本、マンガなども多いので、そこから入るというのもアリかも。名前を覚えるのに苦戦しそうなら、登場人物一覧や相関図を紹介しているWebサイトも多数あります。
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第3位 『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリ著(※同票5作品)
2017年度の「ビジネス書大賞」を受賞した、ベスト3内で唯一のノンフィクションです。
『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福 上・下』ユヴァル・ノア・ハラリ著 柴田裕之訳 河出書房新社 2016.9
SAPIENS : A Brief history of Humankind Yuval Noah Harari. Harper, c2015. 1st U.S. ed.
地球上のすべての生物は、DNAの書き換えによってのみ進化が叶えられるはずだった。しかし、我々ホモ・サピエンスは、紀元前とほぼ変わらぬDNAのまま全生物の頂点に立っている。人類を今日の繁栄に導いた認知革命、農業革命、科学革命の本質は「虚構」の発明にあった! 我々はどこからきてどこへ行くのか? その問いに迫る一冊。
みんなの声
読まなきゃとは思っているのですが......。
読んだ図書館員の声
洋書あるあるですが、一文が長くユーモアを含んだ比喩表現で書かれているため、非常に読みにくいです。反対に、イギリス文学が好きなら、楽しく読めるかもしれないです。
慣れていない人も、100ページほど読むと慣れてくるのでご心配なく。上巻のファンタジーのような紀元前や中世の話は、全て下巻につづく現代社会が抱える諸問題への予兆となっています。読了後、あなたは「人類は常に進化し、良い方向へむかっている」と信じられるでしょうか?
最初、この本のあらすじを読んだときは、正直何を言っているのかまったくわかりませんでした。ですが、読み進めていくうちに「こういうことか!」と納得させられていきます。あらすじを読んで理解できなくても、あきらめないでください。
章ごとに話が大きく変わるので、一気に読もうとせず、ゆっくり読んでみるのも良いかもしれません。
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もっと知りたい「みんなの積ん読」(8位から12位)
順位 | 書誌事項 |
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8位 | 積読こそが完全な読書術である / 永田希著 / イースト・プレス / 2020.4 |
8位 |
ハリー・ポッターと賢者の石 / J.K.ローリング作,松岡佑子訳 / 静山社 / 1999.12 |
8位 | 黒死館殺人事件 / 小栗虫太郎著 / 作品社 / 2017.9 |
8位 | 月の影影の海 上 / 小野不由美[著] / 講談社 / 1992.6 |
12位 |
個人情報保護法コンメンタール / 石井夏生利編著 / 勁草書房 / 2021.2 |
12位 | 独学大全 / 読書猿著 / ダイヤモンド社 / 2020.9 |
12位 | ドリトル先生アフリカへ行く / ヒュー・ロフティング著 / 竹書房 / 2020.4 |
12位 | 戦争と平和 1 / トルストイ著 / 光文社 / 2020.1 |
12位 | 三体 [1]/ 劉慈欣著 / 早川書房 / 2019.7 |
12位 |
星の王子さま オリジナル版 / サン=テグジュペリ作,内藤濯訳 / 岩波書店 / 2000.3 |
12位 | 騎士団長殺し 第1部 / 村上春樹著 / 新潮社 / 2017.2 |
12位 | モモ / ミヒャエル・エンデ作 / 岩波書店 / 2009.8(68刷) |
12位 | こヽろ / 夏目金之助著 / 岩波書店 / 2001.8 |
12位 |
指輪物語 第1部 新版 / J・R・R・トールキン[著],瀬田貞二訳,田中明子訳,アラン・リー絵 / 評論社 / 1992.3 |
12位 | 精霊の守り人 / 上橋菜穂子作 / 偕成社 / 2006.11 |
12位 | 夜と霧 / ヴィクトール・E.フランクル[著] / みすず書房 / 2002.11 |
12位 | 銃・病原菌・鉄 上 / ジャレド・ダイアモンド著 / 草思社 / 2000.10 |
12位 | 地中海 1 / フェルナン・ブローデル[著] / 藤原書店 / 1991.11 |
12位 | 沈黙 / 遠藤 周作[著] / 新潮社 / 1980 |
12位 | 神聖喜劇 第1巻/ 大西巨人著 / 光文社 / 1980.4 |
12位 | 楡家の人びと / 北杜夫著 / 新潮社 / 1977 |