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写図彩色　文久3年（1863）〜慶応1年（1865）　27.7×19.3cm
特別買上文庫　特5126-1

この植物図譜稿は、蕃書調所の用箋に描かれていること、写生者が調所画学局のメンバーであることなどから、幕末に蕃書調所（開成所と改名）で作製されたと考えられている。なかには、後に日本近代絵画の先駆者とされる高橋怡之介（由一）が描いた図も39図含まれる。本図はそのうち「アハイチゴ」すなわち木苺を写したもの。
海雲楼は旧蔵者宍戸昌（さかり）の号。宍戸は元刈谷藩士、維新後大蔵省国債局長などを勤めた人物で、近代植物学の先駆伊藤圭介や蕃書調所で指導にあたっていた博物学者田中芳男などと親しく、その関係でこの図稿を所蔵したと思われる。明治33年に没しているが、画稿はその直後明治34年の新聞紙に挟まれ分類されていた。海雲楼旧蔵書は昭和10・11年に売立に出され、その売立目録が新収資料に残っている。当室所蔵の宍戸氏旧蔵書は、戦時民間の蔵書を買上げ疎開する事業の一環として入ったものだが、混乱期のことで詳細は不明である。