家庭での読書について教えてください<3歳から6歳>
- Q3歳まで絵本を読んであげたことがないのですが、今からでも大丈夫ですか?
- A絵本との出会いに、遅すぎるということはありません。読み聞かせの体験がなかったら、今日から読んであげてください。
3歳の頃から、子供は、驚くほどの集中力で、真剣に絵本を聞くようになります。周りの世界に好奇心を持ち、何でも不思議がり、知りたがる子供にとって、絵本は「絵空事」ではなく、「本当」のことなのです。子供の不思議がる気持ち、驚異の念、冒険心に応えてくれるのが絵本です。大人も子供に導かれて、改めて絵本の楽しさを知ることができるでしょう。
- Q読んでいる途中で、おしゃべりを始めたり、なかなか絵本に集中できません。
- A絵本を楽しめないことには、いろいろな原因が考えられます。絵本を読むより、話を聞いてもらいたいのかもしれません。そんなときは、絵本を脇に置いて、ゆっくりとおしゃべりにつきあってください。急ぐことはありません。今日、こんなことがあったねと言い合ったり、赤ちゃんの頃の思い出を話したりしてみてください。言葉をたくさんやりとりして満足すると、子供は自然に絵本の世界に入ることができます。
- Q同じ絵本ばかり読みたがりますが、ほかの絵本に興味を持たせるにはどうしたらよいですか?
- A大人は、同じ絵本を繰り返すより、新しい絵本をどんどん読んだり、もっと難しい絵本を聞かせようとする傾向があります。でも子供は、「新しいもの」と同じくらい「おなじみのもの」が好きで、大事にします。何度でも読みたがるのは、何か心を満たしてくれる力がその絵本にあるからでしょう。子供時代には、次々と新しい絵本に出会うより、「これは自分の本」としっかり抱きかかえて離さない絵本を持てる方がずっと大切です。
いつかは必ず別の本に興味を示す時が来ます。ゆっくりと待ってあげてください。
- Q読み方が下手で、自信がないのですが、練習をした方がよいですか?
- A家庭で身近な大人から読んでもらうことが、子供にとって最大の幸せなのです。読み方の上手下手は関係ありません。わざわざ練習をすることもありません。ストーリーに心を寄せて、ていねいに読んであげてください。
- Q演じて読んだ方がよいという意見と淡々と読んだ方がよいという意見とありますが、どちらが正しいですか?
- A家庭で読み聞かせをするのに、マニュアルはありません。それぞれの家庭の流儀で楽しめばよいのです。
ただし読み手が演じすぎて、お話より目立つと、子供は「演じ手」を見ることに集中してしまいます。一方、淡々と読むと、子供は聞こうという気持ちを持てなくなります。ストーリーに心を寄せて読めば、自然に抑揚ができて、子供は大人の声に導かれて、想像力を膨らますことができます。
- Q昔話には、オオカミやトロルが最後に死ぬなど残酷な場面がありますが、子供に読んでも問題ありませんか?
- A『おおかみと七ひきのこやぎ』や『三びきのやぎのがらがらどん』などで、悪者は最後に死にますが、それはお話の中で必要なことです。悪者がいつまでも生きていたら、主人公も聞き手の子供も安心できません。悪者がいなくなり、幸せが訪れることに満足するのです。またオオカミやトロルの最期は、苦しんだり、血にまみれたりといったことはなく、形式的に描かれ、少しも残酷な印象を与えません。
昔話は、人類が長い間、語り継いできたお話です。語り手が伝えたいと思い、聞き手が喜んで聞いた昔話だけが今も残っています。そのような昔話は、時や場所を越えて、現代にも共通する知恵や希望を与えてくれます。
- Q車や恐竜などの図鑑類ばかり読んでいますが、いいのでしょうか?
- A4歳から5歳になると、個性が育ち、好きなものにだけ興味を持つ子供が出てきます。とことん好きなものを大切にしてあげてください。図鑑を読み聞かせてもよいし、幼児でも楽しめる知識の本や大人向けの本を読んであげてもよいでしょう。
- Q理解しているか不安なので、読み終わるといろいろ聞いてしまいますが、よくないでしょうか?
- A絵本を理解しているかどうか試すような質問は、やめましょう。絵本を文字や数を学ばせる問題集にするのもやめましょう。子供はそのときは楽しそうに答えていても、絵本がもたらす深い体験を積むことができず、結局、読書から遠ざかることになりがちです。
子供は、絵本をしっかりと読み取り、大人も気づかないような発見をします。その発見の喜びに共感してください。
- Q子供は、絵本からどのようなメッセージを受け取りますか?
- A子供の絵本の読み方は、大人とは全く異なります。絵本の中のできごとを本当のこととして受け止め、主人公になりきって、悲しんだり、喜んだり、不思議がったり、全身全霊でお話を聞き、我を忘れて夢中になり、終わるとほっと満足そうなため息をつきます。絵本は「心の冒険」なのです。普段の生活の中にも、絵本の主人公が出てきたり、本のなかの素敵な言い回しを上手に使ったり、絵本を題材に遊んだり、絵本をたっぷりと楽しみます。
そこに込められた様々なメッセージ―愛情、正義、やさしさ、友情、勇気、ユーモアなどは、誰にも気づかれないところでいつの日か、子供に静かに受け入れられます。ちょうど地面に蒔いた種がいつの間にか芽を出し、葉を茂らすように、時間のかかるものです。
- Qどんな絵本を読んであげたらよいですか?
- A子供には、ある時期、繰り返し読んでもらいたがり、長い時間をかけて自分のものにし、大人になっても思い出として心に収めている、そんな絵本を読んであげたいものです。それには、まず、30年、40年と読み継がれてきた絵本から選んでください。長年読み継がれてきた絵本は、今も昔も変わらず子供に喜びを与えます。また大人も深い満足を得ることができます。子供の文化として、これまで伝えられてきた絵本を次の世代に読んであげてください。
- Qどこで絵本を手に入れたらよいですか?
- A図書館にはよく選ばれた絵本が並んでいます。また絵本や子供の読書についてよく知っている図書館員がいます。地域の図書館に行って相談したり、絵本を借りたりしてください。子供が気に入ったら、買うのも良いでしょう。自分の絵本を持つことは、子供にとってもうれしいものです。
- Q3歳から6歳児にお勧めの絵本を教えてください。
- A
3歳から4歳
『ぐりとぐら』 なかがわりえこ文 おおむらゆりこ絵 福音館書店
野ネズミのぐりとぐらは、森で見つけた大きな卵で、カステラを作ります。多くの大人が、子供の頃の大好きな絵本として、『ぐりとぐら』を覚えています。今も昔も子供の大好きな絵本です。
『しょうぼうじどうしゃじぷた』 渡辺茂男作 山本忠良絵 福音館書店
小さな消防自動車のじぷたが、山火事を見事に消して、みんなから認められます。じぷたの働きぶりが、子供の共感を得ます。車の好きな子にはさらに喜ばれます。
『てぶくろ ウクライナ民話』 エウゲーニー・M・ラチョフ作 うちだりさこ訳 福音館書店
おじいさんが落としたてぶくろに、ねずみやうさぎ、きつね、くまと動物が次々に入ってきて、暮らし始めます。隅々まで生き生きと描かれた絵が見事です。
『三びきのやぎのがらがらどん ノルウェーの昔話』 マーシャ・ブラウン絵 せたていじ訳 福音館書店
三匹のヤギのがらがらどんが知恵を使って、谷川に住むトロルを退治します。橋の上でのトロルとの対決に、子供は胸をとどろかせます。
『だるまちゃんとてんぐちゃん』 加古里子作・絵 福音館書店
だるまちゃんは、てんぐちゃんのうちわがほしくて、いろいろ考えて、自分のうちわを手に入れます。細かく描きこまれた絵が楽しい絵本です。
『こすずめのぼうけん』 ルース・エインズワース作 石井桃子訳 堀内誠一画 福音館書店
初めて空を飛んだ子スズメは、お母さんの言いつけを守らず、一人で遠くへ飛んで行きます。子供は、迷子になった子スズメになりきって、お話を聞きます。4歳から5歳
『うさこちゃんとどうぶつえん』 ディック・ブルーナ文・絵 いしいももこ訳 福音館書店
初めてうさこちゃんは動物園に行き、シマウマやサルやゾウに会います。子供は、まっすぐ前を見たうさこちゃんが大好きです。声に出して読むと、リズムのある美しい文章です。
『おおかみと七ひきのこやぎ グリム童話』 フェリクス・ホフマン絵 せたていじ訳 福音館書店
大人にはおなじみの昔話ですが、子供は子ヤギとオオカミのやり取りを真剣に聞きます。隅々にまで工夫された絵を読み取って、楽しむことができます。
『あおくんときいろちゃん』 レオ・レオニ作 藤田圭雄訳 至光社
ちぎり絵を使ったデザイン性あふれる絵本です。子供はちぎった丸を何の疑問もなく、あおくんときいろちゃんとして受け止めて、楽しみます。
『ゆかいなかえる』 ジュリエット・ケペシュ文・絵 いしいももこ訳 福音館書店
カエルの誕生から一年間を美しく、軽妙な絵で描いています。科学絵本の初歩でもあります。
『おさるとぼうしうり』 エズフィール・スロボドキーナ作・絵 まつおかきょうこ訳 福音館書店
帽子売りのおじさんが、さるたちに売り物の帽子を取られてしまいます。一幕の劇を見るような楽しさがあります。
『おやすみなさいフランシス』 ラッセル・ホーバン文 ガース・ウィリアムズ絵 まつおかきょうこ訳 福音館書店
寝る時間になっても、いろいろ注文をつけるフランシスにパパは根気よく付き合ってくれます。子供にはフランシスが、自分のことのように思えるでしょう。
『ちいさなヒッポ』 マーシャ・ブラウン作 うちだりさこ訳 偕成社
動物の世界の生きる厳しさを描いた、美しい版画絵本です。子供はちいさなヒッポになりきって、金みどりの目のワニに驚き、助けに来たおかあさんカバにほっとします。
『ラチとらいおん』 マレーク・ベロニカ文・絵 ともながやすもと訳 福音館書店
よわむしのラチが小さな赤いらいおんの助けで、強い男の子になります。多くの子供が、暗闇や犬を怖がるラチの気持ちに共感するでしょう。5歳から6歳
『どろんこハリー』 ジーン・ジオン文 マーガレット・ブロイ・グレアム絵 わたなべしげお訳 福音館書店
黒いぶちのある白い犬のハリーが、泥んこになって遊んでいるうちに、白いぶちのある黒い犬になってしまいます。親しみやすい絵と愉快なお話です。
『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』 バージニア・リー・バートン文・絵 むらおかはなこ訳 福音館書店
一人で自由に線路を走り出したきかんしゃちゅうちゅう。白黒の絵が躍動感あふれています。長いお話ですが、子供は夢中で聞きます。
『ピーターラビットのおはなし』 ビアトリクス・ポター作・絵 いしいももこ訳 福音館書店
ピーターラビットは、マグレガーさんに捕まりそうになって、必死に逃げ回ります。安全な家に無事帰ってほっと安心。いたずらなうさぎの冒険が詰まった1冊です。
『チムとゆうかんなせんちょうさん』 エドワード・アーディゾーニ作・絵 せたていじ訳 福音館書店
チムが乗った船が難破し、船長さんと取り残されます。チムの一本気でけなげな行動は、子供の憧れをかきたてます。
『サリーのこけももつみ』 ロバート・マックロスキー文 石井桃子訳 岩波書店
こけももつみに行ったサリーとお母さんは、山でくまの親子と思いがけない出会いをします。雄大な自然を背景に、大らかでユーモラスな話が展開します。
『ひとまねこざる』 H.A.レイ文・絵 光吉夏弥訳 岩波書店
いたずらなおサルのじょーじは、次々と事件を起こしますが、最後はきいろいぼうしのおじさんのおかげで、幸せになります。絵を見ていくだけでお話がたどれる見事な絵本です。
『かにむかし』 木下順二作 清水昆絵 岩波書店
日本の昔話、さるかに合戦の絵本です。リズミカルな言葉の繰り返しがお話を盛り上げています。