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包み紙・掛け紙

包み紙・掛け紙

 加賀文庫で所蔵する貼込帖の中から、食に関する紙ものを集めた貼込帖を3点ご紹介します。旧蔵者である加賀豊三郎氏自身が編纂したものと思われ、和綴じの冊子に各地の駅弁や名産品、郷土菓子などの包み紙や掛け紙、商標ラベル、由来を記した栞といったものが貼り込まれています。
 加賀豊三郎氏は、明治5年(1872)に生まれ、昭和19年(1944)に亡くなられましたので、貼り込まれているものは、ほぼこの間に作成されたものと思われます。洒落たデザインのもの、時代背景が感じられるもの、現在も営業している老舗のものなど、見ているだけでも楽しめます。
 加賀氏は、証券業の世界で活躍した実業家でした。貼込帖の台紙として、「株式買受申込證」や「賣出要項」のような証券関係の用紙の裏面が使われているのも興味深いところです。

1 駅弁

汽車辨套

きしゃ べんとう

加賀文庫 加3593

【画像】汽車辨套

 表紙に「汽車辨套(きしゃべんとう)」と書かれた題簽(だいせん)が貼られています。旅先から捨てずに持ち帰ったものでしょうか。この貼込帖には、各地の駅弁の掛け紙が貼り込まれています。
 駅弁の起源については諸説ありますが、明治10年代には販売されるようになったとされています。初期の掛け紙は、弁当名と駅名だけ記されているような簡単なものでしたが、徐々に記載される内容が増え、デザインも多彩になっていきました。
 今回ご紹介する掛け紙は主に上等弁当のものですが、貼込帖にはそのほか、サンドイッチや寿司などの掛け紙も見られます。上等弁当は、別々の折箱に入れられたご飯とおかずが二段重ねになった高級弁当です。(26.5×19cm)

※駅弁の折箱に掛ける紙には昔から様々な呼び方がありますが、ここでは「掛け紙」を用いました。

【画像】「上等御辨當 八王子 玉川亭 野村清吉」

「上等御辨當 八王子 玉川亭 野村清吉

 玉川亭が八王子駅で販売した上等弁当。掛け紙は観光案内を兼ねており、鉄道の路線図や近隣の名所が描かれているほか、駅から主な名所までの距離が「大善寺へ 十五丁」などと紹介されています。単位が「丁」であるところに時代が感じられます。「14.10.30 午后5」とある日付印は調製日時を示しています。調製日付印は大正6年(1917)頃から始まったとされており、年代を推定する手がかりになるものです。ただし元号が入っていませんので、大正14年(1925)か昭和14年(1939)か判断するのは難しいところですが、上等弁当が35銭という価格から、大正14年10月30日午後5時の調製だと思われます。(19.1×11.8cm)

【画像】「上等お辨當 千葉 加納屋支店 佐久間モト」

「上等お辨當 千葉 加納屋支店 佐久間モト」

 千葉駅で販売された上等弁当。掛け紙の絵柄の上に枠が3つあり、2つには「高級ビールカスケード」と「櫻正宗」の広告が入っています。広告入りの掛け紙は大正末期頃に見られたもので、調製日付印の「15.8.8 午后6時」は、大正15(1926)年8月8日午後6時と思われます。一番下の枠には、弁当の空き箱や果物の皮を捨てるときのマナーが注意書きされています。欄外下部に「東京鐵道局公認 東京 合資會社丸ノ内商店印行」と記されていますが、当時は掛け紙の印刷を東京の指定業者が請け負い、広告と調製元は別刷りになっていたようです。(19.2×13.2cm)

【画像】「五目辨當 新津 遠藤」

「五目辨當 新津 遠藤」

 新潟県の新津駅で販売された五目弁当。調製元は「遠藤」、価格は30銭とあります。この掛け紙は貼り込まれてはおらず、ページの間に挟み込まれています。調製日付印も押されていませんので、もしかすると未使用のものを入手したのかもしれません。
 価格の前に記されている、丸で囲まれた「停」の字は停止価格を表します。国家総動員法に基づく価格等統制令により、昭和14年(1939)9月18日の水準に価格が据え置かれた物品に付けられました。また、「節米運動」「國民精神總動員」「防諜に總力」「代用食を愛しませう 一粒も残さず頂きませう」といった標語からは、戦時色が濃くなってくる世相が感じられます。これらのことから、昭和10年代半ば以降に作成されたものであると思われます。絵柄も勇ましいデザインです。(19×13.5cm)

【画像】「賀正御辨當 静岡 東海軒」

「賀正御辨當 静岡 東海軒」

 東海軒が静岡駅で販売した駅弁で、価格は30銭です。掛け紙には「賀正」と書かれており、お正月の時期限定のものであることがわかります。年賀用に掛け紙を変えることは、大正末期から盛んになり、特に東海道本線沿線の駅で数が多かったようです。『東海軒百年史』によれば、東海軒が年賀用の掛け紙を使用していたのは、大正末期から昭和初期にかけてということですので、調製日付印の「7.1.1 午前11時」は、昭和7年(1932)1月1日午前11時と思われます。(17.7×15cm)

【画像】「鯛めし 小田原 東蕐軒」

「鯛めし 小田原 東蕐軒」

 鯛の絵が大きく描かれた掛け紙は、小田原駅で販売された「鯛めし」のものです。鯛めしや鮎めしなど、特産の単品素材をメインに打ち出した駅弁は特殊弁当と呼ばれています。調製元の東華軒が「鯛めし」を発売したのは、明治40年(1907)。以来、現在に至るまで製造されているロングセラーの駅弁です。掛け紙の左上には、「愛せよ風景 美化せよ國土」という標語が印刷されています。調製日付印の「13.1.2」は、30銭という価格から、昭和13年(1938)1月2日と思われます。(18.2×16.7cm)

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2 名産品

目食帖

もくしき じょう

加賀文庫 加3741

【画像】目食帖

 「目食帖(もくしきじょう)」と書かれた題簽が貼られている冊子には、各地の特産物の包み紙や掛け紙、商標ラベルなどが貼り込まれています。加賀氏自身が買い求めたものか、あるいは友人知人からの到来物でしょうか。同種の貼込帖に『目食雑箋(もくしきざっせん)』(加3740)があります。(27.2×19.5cm)

【画像】「元祖つくだ煮 鮒佐」

「元祖つくだ煮 鮒佐」

 佃煮の専門店「鮒佐(ふなさ)」の掛け紙。鮒佐は文久2年(1862)の創業以来、浅草に店を構える佃煮一筋の老舗です。小魚や貝類、海藻類を醤油で煮詰める佃煮の原型を作り出し、「佃煮の元祖」といわれています。江戸時代のしらうお漁の様子が描かれているという掛け紙には、現在では販売されていない鮒すずめ煮、鮒かんろ煮などの品書きも並んでいます。(24.3×16.8cm)

【画像】「京名物 御湯葉 千丸屋忠次郎」

「京名物 御湯葉 千丸屋忠次郎」

 京都の「千丸屋(せんまるや)」が販売した湯葉の掛け紙。中国から伝来したとされる湯葉は、京料理や精進料理に欠かせない食材です。「千丸屋」は文化元年(1804)、湯葉の主要産地である京都で創業。現在に至るまで、京湯葉づくり一筋の老舗です。掛け紙には第4回と第5回の内国勧業博覧会で賞牌を受領したことなどが記されています。(12.8×18cm)

【画像】「長崎特産 茂木枇杷 松本商店」

「長崎特産 茂木枇杷 松本商店」

 色鮮やかな枇杷の絵が描かれた掛け紙には、「長崎特産」「風味佳良」と記されています。長崎は枇杷の主要産地であり、江戸時代から栽培の歴史があります。中でも「茂木(もぎ)」は代表的な品種です。松本商店の詳細は不明ですが、「長崎市公設卸市場」と記されていますので、卸業者でしょうか。(17.5×24.5cm)

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3 菓子

菓子商標集

かし しょうひょう しゅう

加賀文庫 加3828

【画像】菓子商標集

 『目食帖』のお菓子版といえるものです。「菓子商標集」と書かれた題簽が貼られた冊子4冊に渡り、饅頭や羊羹など、各地の郷土菓子の包み紙や掛け紙、商標ラベル、栞などが貼り込まれています。同種の貼込帖に『名所名物包装紙並商標』(加4232)、『日本全圖菓子譜壹』(加12434)があります。(27.5×19.5cm)

【画像】「おゑんま飴 四谷新宿 ほてい屋」

「おゑんま飴 四谷新宿 ほてい屋」

(請求記号:加3828-1)

 新宿の太宗寺(たいそうじ)に隣接する「ほてい屋」が売り出した「おゑんま飴」の紙袋を、表面と裏面を切り離して貼り込んであるようです。表面には閻魔大王の迫力ある姿が描かれ、裏面には「おゑんま飴」の由来が記されています。日付は「昭和八年一月吉日」となっています。旧暦1月16日と7月16日は、この日にだけ地獄の釜が開き、鬼たちも休みになるとされていました。閻魔大王を祀る寺は、藪入りで奉公先から休みをもらった奉公人たちが参詣へ繰り出して、たいそう賑わったそうです。「おゑんま飴」は、そのような縁日で売られていたとされています。(27×18cm)

【画像】「元祖煉羊羹 日光 綿屋半兵衛」

「元祖煉羊羹 日光 綿屋半兵衛」

(請求記号:加3828-2)

 現在「綿半(わたはん)」として知られる老舗和菓子店は、天明7年(1787)に創業。日光名物の一つ「煉羊羹」を日光で最初に製造販売したと言われています。以来、各地の大名や公家などが日光土産として持ち帰ったことで、全国に広く知れ渡ったとされています。掛け紙には、「第三回勧業博覧會 褒状」と記されています。(18.5×17.5cm)

【画像】「粟おこし 大坂 津の清」

「粟おこし 大坂 津の清」

(請求記号:加3828-2)

 大阪名物の「粟おこし」は、水あめや砂糖から作られるシロップに、粟粒状にした米、胡麻などの原料を加え、混ぜ合わせて板状にしたお菓子です。宝暦2年(1752)創業の老舗「つのせ」の初代清兵衛が、日本古来のお菓子である「おこし」を、それまでのつくね状や竹筒に入れたものから、現在のような形に確立したと言われています。包み紙のデザインも凝っており、中央には布袋様の絵が描かれています。(19×24cm)

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主な参考文献

【図書】

タイトル / 編著 / 出版社 / 出版年 等 請求記号
資料コード
汽車弁文化史 / 雪廼舎閑人著 / 信濃路 / 1978.5 6865/7/78
1120731375
駅弁学講座 / 林順信著 / 集英社 / 2000.9 596.4/5004/2000
5001578200
東海軒百年史 駅弁ラベルにみる / 林順信著 / 東海軒 /1989.12 6737/3078/89
1124631135
明治・大正・昭和駅弁ラベル大図鑑 / 羽島知之編 / 国書刊行会 / 2014.7 675.1/5180/2014
7104661620
食べもの屋の昭和 30店の証言で甦る飲食店小史 / 岩崎信也著 / 柴田書店 / 2008.5 673.9/5708/2008
5015244370
東京老舗の手みやげ / ぴあ / 2022.1 T/588.3/5027/2022
7115190239
図説果物の大図鑑 / 日本果樹種苗協会/監修 / マイナビ出版 / 2016.10 R/625.0/5071/2016
7108213413
47都道府県・和菓子 / 郷土菓子百科 / 亀井 千歩子著 / 丸善出版 / 2016.1 383.8/5798/2016
7106810667
和菓子の辞典 / 奥山益朗/編 / 東京堂書店 / 1989.9 / 新装普及版 R/5966/73A/89
1125633303

【雑誌記事】

論文名 / 著者 / 掲載誌 巻号 / 出版社 / 出版年 / 掲載ページ 等 資料コード
駅売弁当の変遷 / 小田きく子 / 学苑 778号 / 昭和女子大学近代文化研究所 / 2005.8 / p.15-28 5011722390
駅弁今昔物語 東華軒の「鯛めし」<神奈川> / 沼本忠次/文 / 旅行読売 881号 / 旅行読売出版社 / 2019.10 / p.136-137 7112257620
おうちご飯を贅沢に 京都産の食材 / 京都 830号 / 白川書院 / 2020.9 / p.35 7113242855

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