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東京マガジンバンクセミナー「雑誌を解剖する」当日の様子

2014年6月28日

「東京マガジンバンク」セミナー「雑誌を解剖する-編集者と研究者それぞれの視点から-」を開催しました。講師は元「POPEYE」編集長で江戸川大学教授の清水一彦氏と、中央大学教授の辻泉氏です。
男性誌を題材として、清水氏には、具体的な事例を基に、雑誌が社会状況の影響を受けたり、文化に影響を与えながら作られる様子や、雑誌業界の実情についてお話しいただきました。辻氏には、雑誌を調査、分析することにより、社会や文化の状況を明らかにする研究者の立場からお話しいただきました。
また、17,000タイトルのバックナンバーが並ぶ「東京マガジンバンク」書庫を講師の解説とともに巡る見学を行いました。
講演とあわせて、関連資料の展示を行いました。
展示資料のリストを掲載しますので、ぜひご覧ください。

講師 清水一彦氏 辻泉氏

講師 清水一彦氏 辻泉氏

1.日時

平成26年6月28日(土) 午後1時から午後4時まで

2.会場

東京都多摩教育センター 301・302研修室

3.講師

清水 一彦(しみず かずひこ)氏(元「POPEYE」編集長、江戸川大学教授)
辻 泉(つじ いずみ)氏(中央大学教授)

4.内容

「雑誌を解剖する-編集者と研究者それぞれの視点から-」

「雑誌を解剖する」-男性ファッション誌の内容分析から- 辻泉氏

1990年代から2000年代にかけては、男性誌の創刊数が増えています。中央大学FLPジャーナリズムプログラム(学部横断型ゼミ)において、私が担当する辻ゼミでは、雑誌刊行の実態把握と、その歴史についての研究プロジェクトを実施しています。今年は男性誌について研究しています。
今回の分析では、系統別比較と時系列比較の2つについて、記事や表紙のテーマ、広告の割合などについて計量的な内容分析を実施しました。まず系統別比較では、11の男性誌と2つの女性誌の2009年8月号について、全頁を分析しました。女性誌は広告が多いといわれますが、男性誌のほうがもっと多いことがわかります。記事のテーマについては「おしゃれ」が圧倒的に多く、「生き方(恋人との付き合い方など)」についての記事はとても少ないのです。時系列比較では「ポパイ」と「メンズノンノ」の創刊号から現在までの全号の表紙を比較しました。ポパイは時代により変遷が見られますが、「メンズノンノ」は100%「おしゃれ」のみとなっています。
男性誌は、「関係性志向」から「自分志向」へと方向性が変化し、雑誌の創刊も自分志向の高まりの中で多様化していると考えられます。

雑誌編集の現場から 清水一彦氏

現在はいろいろな雑誌が発行されていますが、発行部数は少ないです。雑誌も、読者である若者も、アソートチョコレートのように、少しずつ違うチョコレートが箱詰めされているようです。読者は、少しずつ違う、その差異に非常に敏感です。
最近、「ポパイ」が昔に戻ったといわれています。現在の編集長は自分の原体験となった時期の「ポパイ」が非常に好きで、そのころに戻りたいと考えました。今風にアレンジしてやってみたら大成功!マガジンハウスは、編集長の好きなように雑誌を作るのが社風です。その前との連続性は考えなくてもいいのです。そのかわり、売れなければ編集長は交代です。
雑誌を作るには、無駄がとても必要です。編集者やライターなどのスタッフは、編集長の編集方針や企画にあわせて特集案をたくさん提出します。それらはいっけん無駄とおもわれるほどの豊富な遊びや体験といった裏付けのある、どれをとってもらっても自分の最高の仕事だと自信のあるものばかりです。編集長は安心してその中からベストをえらぶのです。残りは全部捨てられます。それを無駄と思う人は、マスコミでは生きていけません。

質問に答えて

情報を手軽にスマホで、という人が増えていると思うが、雑誌は今後どうなっていくのか。

いろいろなニュースサイトの情報も、もとは新聞や雑誌のサイトから引用したものです。インターネットは運送会社のトラックのようなものです。みなさんはトラックが来たことがうれしいのではなく、届いた品物がうれしいですよね。雑誌をつくることは、いいかえれば品物をつくること。品物を作る人も運ぶ人も大切な仕事をしているのですが、仕事の領域はことなります。それに品物を欲しがる人はいなくなりません。

雑誌の発行部数は最盛期よりだいぶ減っているというが。

1997年が広告販売のピークになっています。団塊ジュニア世代が10代・20代で、たくさんの本を読み、生産人口も同じころにピークを迎えました。その時売れすぎていたのが適正な部数に戻っただけだと考えています。

雑誌が社会を作るのか、社会が雑誌を作るのか。

社会の一部として雑誌があると思います。雑誌はよく、社会の半歩先、一歩先、といわれますが、社会システムの一つとして共生しているのだと思います。

最後に

東京マガジンバンクの書庫を、8つのグループに分かれて見学しました。講師の方には、「アンアン」などのバックナンバーの前で、さまざまなお話を語っていただきました。創刊号コレクションについては、受講者として出席していた難波功士氏(関西学院大学社会学部教授、『創刊の社会史』(筑摩書房2009)著者)に急遽説明をお願いしました。

会場の様子

会場の様子

展示資料1

展示資料

展示資料2

展示資料

5.参加者の声

  • 最初に体系的な前置きがあって、清水さんの実体験が加わって新しい発見とともに整理されました。
  • アソートチョコの一つ一つ、無駄が大事という話に納得した。自分も一見無駄に思える箇所、遊びやゆとりといったものが生きる上でもすごく大切だと思う。
  • 男性誌に絞ったお話が興味深く、新たな視点のヒントを得ました。なにより、バックヤードと書庫の見学ツアーが貴重で楽しかったです。ありがとうございました。
  • 研究者の方の視点で疑問に思ったことが、編集者の方の視点で解決したり・・・と、とてもよい構成でした。
  • 男性誌の3つの時代について、レジャー→生き方→おしゃれと移行したというお話が面白かった。雑誌の現状についてアソートチョコに例えた話が大変わかりやすかった。

6.当日の配布資料

辻氏の資料をご提供いただきました。

当日の配布資料(辻氏)

画像をクリックするとPDFファイルが開きます。(PDF形式 1,634KB)

7.展示資料リスト

男性誌のバックナンバー約300冊を展示しました。

展示資料リスト

画像をクリックするとPDFファイルが開きます。(PDF形式 217KB)

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