ページの先頭です

ページ内を移動するためのリンク
本文へ移動する

ここからグローバルナビです。

グローバルメニューここまでです。

立ち位置は横! 板橋区立赤塚図書館 青木浩二

「紙芝居をやってみたいけれど、声が通らない気がします。」四月から始めたお話しボランティアさんの一言に、私は内心、小さく頷きました。
「大丈夫ですよ。気にしすぎです」と、励ますつもりで答えはしたものの、紙芝居についての知識の浅さを自覚している私は、前年度に東公図で知り合った、キャリアの長い葛飾図書館の井口さんにアドヴァイスを仰ぎました。
確かに紙芝居の後ろで、座って文章を読む方法では、声だけでなく視界まで紙芝居に遮られ、子供の反応の確認も出来ません。
今まで、紙芝居の利用については、保育園・幼稚園の団体貸出が多いことから、あえて図書館のお話会で取り上げなくてもよいと思い、児童担当として約四年、紙芝居に触れるのは、受入・配架時が殆どでしたが、井口さんに助言をいただいたことと、東公図紙芝居グループでの勉強により紙芝居の面白さを知り、半年後、お話会担当時には必ず、紙芝居を演じるまでになりました。

<一月十五日> ―紙芝居実演の日―
演目 「子そだてゆうれい」 桜井信夫 / 脚本
須々木博 / 画 童心社

絵本を読みおえ、子供達から1メートル程離しておいた、机の上の紙芝居舞台を、しずしずと立ち上げます。
「拍子木忘れた。」動揺を隠し、子供の反応の確認と、声がとおるように、立ち位置を紙芝居の向かって左横にとります。
厳かに舞台を開くと、そこには画面を隠す、青の幕紙。これは上質紙製の手作りです。「みえなーい。」三・四人から声が上がります。
反応のよさに頬を緩めつつ、幕紙をゆっくり抜きながら、息を吸って、「子そだてゆうれい」。顔は正面、作者の名前も忘れずに。「むかし、あるところに、」抜いた頁は文章が目の端に入るよう、裏を上にして机の上、舞台の後ろに置いていきます。
「おいおい、口開けて見てるよ」頭の中の脚本を確かめつつ、子供達を見渡します。
「...いきついたのは、」演出ノートには無いけれど、ここは一旦抜きを止めて、「はかばのはずれでした。」さっと、残りの半分、墓の絵を出します。かすかに子供の表情が強張ったよう。
途中、セリフの間違いはあったものの、再び幕紙を差し込んで、ゆっくり、はっきり、「おしまい」。子供達の小さい肩が、一斉に、ストンと落ちます。
まだ、覚束ない、ばらばらの拍手におじぎをして、私もほっと息をつきます。「上手くいったぁ」子供の表情を、みていたからこその思いです。そして、そう思える時は、いつも、もう忘れてしまった幼い頃の母の読み聞かせが、形を変えて私の内部に確かに息づいていることが、喜びとともに感じられるのです。

ここからサイトのご利用案内です。

サイトのご利用案内ここまでです。