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都立多摩図書館 ウォール展示「雑誌で見る東京オリンピック・パラリンピックまでのプロセス」

2021年8月13日

2021年10月20日更新


東京都立多摩図書館では、「雑誌で見る東京オリンピック・パラリンピックまでのプロセス」というテーマのもと、東京マガジンバンクで所蔵する雑誌等を活用した展示を開催しました。

会期

2021年7月26日(月)〜2021年10月6日(水)

休館日:8月5日(木)、8月20日(金)、9月2日(木)、9月17日(金)

*開館時間・ご利用方法等の詳細はこちらのページをご確認ください。

会場

東京都立多摩図書館 1階 展示ウォール

コーナー紹介

1.生島淳氏のセレクト雑誌

今回の展示では、東京マガジンバンクカレッジパートナーでもある、スポーツジャーナリストの生島淳氏に雑誌をセレクトしていただきました。

オリンピック招致や新国立競技場の建設について特集した雑誌、今回期待される選手、オリンピックの歴史等の雑誌記事をセレクトしていただき、それぞれの雑誌について、生島氏のコメントを添えて展示しました。

*東京マガジンバンクカレッジについてはこちらをご覧ください。

*生島淳氏セレクト雑誌&コメントはこちら

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を終えて、雑誌をセレクトした生島氏に、大会を振り返っていただきました。NEW

●振り返って

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が終わって、どこかホッとしている自分がいる。
 小学3年生の夏休みにモントリオール大会が開かれ、自由研究で「オリンピックの研究」をしていたほどだから、4年に一度の祭典のことを大切に思ってきた。
 1996年、初めてオリンピックを現地で観戦してからは、仕事として関わるようになり、恋い焦がれてきたと言ってもよい。
 オリンピックには、なにやら人を巻き込む「渦」のような力が作用しているからだ。
 そんな自分が、大会が終わってホッとしていることに驚く。なぜか? やはり開幕前のドタバタや、東京2020大会が社会生活に与えた影響を振り返ると、それが本音なのだ。

 東京2020大会を振り返る時に必要なのは、運営面と競技面を分けて評価、検証することだと思っている。
 運営面では、2020年に延期が決まり、同年5月29日の国連のハイレベルのオンライン会合において、当時の安倍晋三首相は、
「人類が打ち勝った証として、完全な形で開催する決意だ」
と話した。
 また、組織委員会は延期によって開催に対する国民の思いが冷えてしまったことを認め、「機運の醸成」が必要だと考えていた。
 終わってみて、どうだったか。
 残念ながら現実は甘くはなく、森喜朗組織委員会会長の辞任、開会式の演出チームの度重なる交代は「オリンピック離れ」を引き起こした。
 加えて、ほとんどの会場は無観客となり、多くの日本人は自国開催のオリンピックをモニター越しに観戦することになった。
 とても、残念なことだ。

 東京2020大会の招致、そして開催準備にあたっては、「レガシー」という言葉が再三使われた。
 私が思うに、レガシーとは政治家や運営トップが与えるものや残すものではなく、ひとりひとりの記憶に宿るものだと思っている。
 2019年のラグビーワールドカップを思い出して欲しい。現地で、パブリックビューイングであの大会を体験した人たちは、一生の思い出を作ったに違いない。
 本来なら、東京2020大会もそうなるはずだった。家族と、あるいはクラスメイトと観戦した体験は、未来への財産になるはずだった。
 その機会が失われてしまったのは、本当に惜しい。

 東京2020大会の救いは、アスリートの存在であり、競技そのものだった。
 関係者しか観覧が許されない無観客試合。いつもと勝手は違っただろう。しかし、メダルを目指す戦いの本質は変わることなく、いくつもの発見、驚きがあった。
 卓球混合ダブルス決勝。水谷隼・伊藤美誠組が見せた準々決勝での奇跡の逆転、そして決勝での神がかった連続ポイント。
 競泳、女子個人メドレーの大橋悠依の理知的な勝負強さ。
 柔道では大野将平が、「柔道家」の真髄を見せ、女子バスケットボールの選手たちが見せた3ポイントシュートの正確性は、この競技が持つスリルと快感を存分に堪能させてくれた。
 そしてパラリンピックでは男子車いすバスケットボールが健闘し、決勝まで駒を進めた。開催が不透明な状況で、開催を信じ、ひたすら練習に励んだ選手たちには頭が下がる思いだ。

 東京2020大会が残したものはなんだったのだろう?
 私が感じるのは、選手たちの知性、規律、そして勝負強さである。
 2015年のラグビーワールドカップで日本代表のヘッドコーチを務め、現在はイングランドを率いるエディー・ジョーンズ氏は、かつて私にこう話した。
「自分がコントロール出来ることに集中すべきなのです。自分で変えられないことに気を取られるのは、時間のムダです」
 スポーツは、時に生きることの真理を教えてくれる。
 そして雑誌は、一冊にまとまることで、東京2020大会を圧倒的なスピードで振り返ることが出来るだけでなく、まだ生まれていない私たちの子孫に、2021年の空気を伝えてくれることだろう。
 これもまた、レガシーのひとつである。

2021年9月
生島 淳

生島淳氏セレクト雑誌&コメント(「」内は記事名)

2020東京オリンピック NEW

『Sports Graphic Number Plus』(2021年9月)

オリンピックでメダリストとなった直後の選手たちの声。いずれも延期を味方にしたことが見えてくる。私自身も、水谷隼、古川高晴、入江聖奈の3人の取材を担当。入江選手の写真にも注目してください。

『週刊朝日』126巻 42号 通巻5729号 (2021年8月25日増刊)、『サンデー毎日』100巻 39号 通巻5679号 (2021年8月28日増刊)

種を明かせば、オリンピックは代表取材なので写真素材は全部一緒。編集者の腕の見せどころはどの写真をピックアップし、どう誌面を構成するかということ。好きな競技のページ、各誌の編集を比較してみるのが楽しいですよ。

招致関連

『文藝春秋』91巻12号(2013年11月)

「IOC総会 熾烈な『情報戦』の勝利」

前組織委員会会長・森喜朗氏による招致の成功譚。当時の猪瀬東京都知事を"小物"としてあしらっているのも面白いし、移動の機内で感染症にかかったあたりも生々しい(話をまとめたのは文春の編集者だろう)。

『週刊文春』55巻36号通巻2740号(2013年9月19日)

「2020年東京五輪決定!大いなる歓喜と一抹の不安と」

招致決定の雰囲気をよく表しているワイド記事。喜びつつも、いろいろな不安もあるな......という当時の雰囲気が伝わってくる。

1964東京オリンピック

『東京オリンピック 完全復刻アサヒグラフ』(2013年10月)

すべての競技をカバーする姿勢はこの時から一貫しており、当時の躍動が伝わってくる。楽しいのは広告。およそ50年前の日本の経済の様子が垣間見られる。

オリンピックを知る

『別冊一億人の昭和史 昭和スポーツ史 オリンピック80年』(1976年9月)

私が小学生の時、家にあった一冊でむさぼるように読んだ記憶がある。昭和のスポーツがオリンピックを軸に再現されるが、相撲、野球にまで目が行き届いている。

『週刊朝日 東京2020オリンピック読本』125巻10号通巻5630号(2020年2月25日増刊)

まだ、2021年への延期が決まっていなかった不透明な時期に出版された雑誌。選手、指導者の生の声が伝わってくる。

『ナンバー』42巻9号通巻1025号(2021年5月6日)

「オリンピックの話をしよう。アスリート50人が語る東京五輪」

私も執筆しているが、「アゲインストだからこそ、スポーツとしてのオリンピックを真正面から取り上げたいんです」という編集長の熱意がこの一冊に。オリンピックの価値を言葉で味わいたい。

新国立競技場

『ランドスケープデザイン』105号(2015年12月)

「明治神宮の森と新国立競技場」

デザインコンペ案が見られる貴重な史料。素晴らしいデザインが並んでいるのに、実際に出来上がったスタジアムは......。コンペ案は見ているだけで楽しいです。

『新建築』94巻11号(2019年9月)

「開催まで1年 東京2020大会会場整備」

東京の様々な会場の姿が美しい写真とともに見られる。設計者の思いを読んで予習してから、オリンピックが終わったら訪れてみたい。

デザイン

『芸術新潮』39巻9号通巻465号(1988年9月)

「オリンピックデザイン記録伸ば史」

ソウルオリンピック前の企画だが、とても興味深い。デザイン、テクノロジーの進化からスポーツを捉えており、多角的な視点が「雑誌」の強みを教えてくれる。

『週刊文春』57巻32号通巻2835号(2015年8月27日)

「1964年東京五輪 建築遺産を歩く」

モノクログラビアで、1964年東京大会の建築遺産。素晴らしいデザインのアリーナが並ぶ。間違いなく、これはレガシー。で、今回は何が遺せるの?

リオデジャネイロ・オリンピック

『週刊朝日 リオオリンピック総集編』121巻48号通巻5391号(2016年9月5日増刊)

オリンピックは「点」ではなく、「線」で捉えるべきであり、5年前のリオ大会で何があったかを振り返ってから、東京オリンピックにつながるストーリーを想像していきましょう。

『サンデー毎日 リオオリンピック全記録』95巻38号通巻5356号(2016年9月10日増刊)

朝日、毎日ともにデザイン、レイアウト、そしてどの場面を切り取るかの視点に、違いがあります。雑誌の楽しみは、比べながら編集者の視点を読み解くことです。

コロナ禍

『週刊新潮』65巻13号通巻3229号(2020年4月2日)

「『東京五輪』の命運は...『4月終息は本当か』」

オリンピックの延長が発表されてから、日本はどんなムードだったかが分かります。コロナ「4月終息説」があったことに驚きます。

『文芸春秋』98巻5号(2020年5月)

「小池百合子東京都知事すべての疑問に答える」

これは必読です。中止、追加コスト、水際対策などのキーワードが並び、大会後の検証の貴重な史料となりそう。

『Sports Magazine 東京オリンピック開催祈念号』1号(2020年7月)

本来なら2020年に開催されていた時期に出た一冊。延期によって選手たちにどんな影響が出ていたかが分かる。私も1964東京オリンピックのレガシーを訪ね、東京を歩いております。

見どころを伝える専門誌

『Sports Gaphic Number Plus』(2021年7月)

「五輪の学校2021」

ほぼ日とのコラボ企画。競技を楽しむための予習に最適。私は柔道・塚田真希さんのノンフィクションを担当。究極の戦いを再現してみました。

『陸上競技マガジン』71巻13号通巻1029号(2021年8月)

オリンピックプレビュー号。表紙の110mハードルの泉谷駿介はトラック競技ではメダルに一番近い選手です。

『スイミングマガジン』45巻6号通巻535号(2021年6月)

表紙の佐藤翔馬は、200m平泳ぎで今季世界ランク2位。慶応高校2年までは医学部進学と競泳のどちらに進むか迷っていたとのこと。競泳代表の「声」を読んでみてください。

『スイミングマガジン』45巻8号通巻537号(2021年8月)

専門誌の強みは自国の選手だけでなく、海外の選手たちへの目配りが利いていること。日本のライバルであるアメリカ、オーストラリアの状況も分かります。

『月刊バレーボール』75巻8号(2021年8月)

今回、私が期待しているのは男子。20歳ほどの選手たちが新戦力となり、今後のバレーボール界を盛り上げてくれそうな気配。男女とも準決勝進出を期待します。

『バドミントン・マガジン』42巻8号通巻513号(2021年8月)

男子シングルスの桃田賢斗選手をはじめ、金メダルの期待が大きい女子ダブルスなど、代表13選手の紹介があり、海外勢の戦力地図も見えてきます。

『卓球王国』25巻8号通巻291号(2021年8月)、25巻9号通巻292号(2021年9月)

私の貴重な史料ともなっている卓球王国。今回のプレビューも大迫力!出場選手リスト、団体戦の予想など、圧倒的な情報量!

『ソフトボールマガジン』45巻8号通巻540号(2021年8月)

オリンピックにおける日本女子の激闘史が熱い言葉で語られ、そして北京の金メダリストである上野、山田が13年の時を経て、再びオリンピックに挑む。ソフトボールの貴重な史料。

『近代柔道』43巻8号通巻508号(2021年8月)

日本のお家芸、柔道。地元開催に懸ける意気込みは並々ならないものがある。コロナ禍での延期も、己を律する柔道家の姿が浮かび上がってくる。

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2.東京オリンピック 全33競技の雑誌

東京オリンピック2020競技大会では、全部で33競技が行われました。展示ウォールでは、各競技の専門誌、選手が表紙を飾っている雑誌、選手が特集されている記事などを展示しました。

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3.歴代オリンピック

1964年東京オリンピック〜2012年ロンドンオリンピックの特集号を開架書庫前に展示しました。表紙の変遷からオリンピックの歴史を感じることができます。

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*2016年リオデジャネイロ・オリンピックの特集号は生島淳氏のセレクト雑誌コーナーに展示しました。

4.その他

上記の3つのコーナーの他にも、オリンピック・パラリンピックに関連した資料を展示しました。

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展示資料リスト

「雑誌で見る東京オリンピック・パラリンピックまでのプロセス」展示資料リスト.pdf

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