東京マガジンバンク講演会「元気の出る雑誌の話」
2013年10月13日
東京マガジンバンク」講演会「元気の出る雑誌の話」を開催しました。講師はフリー編集者で文筆家の仲俣暁生氏です。自身が編集に携わった雑誌にまつわる話や自身の雑誌観、各地の魅力的なミニコミ誌について、熱く語っていただきました。
当日のお話の一端をご紹介します。いろいろなお話があった中のごく一部ですが、元気の出る内容です。
講演とあわせて、関連資料の展示と書庫見学を行いました。
展示資料のリストを掲載しますので、ぜひご覧ください。
講演会会場の様子
日時
平成25年10月6日(日) 午後2時から午後5時まで
会場
東京都多摩教育センター 301・302研修室
講師
仲俣 暁生(なかまた あきお)氏
フリー編集者、文筆家、武蔵野美術大学非常勤講師
内容
仲俣氏が編集者として雑誌を編集したのは『シティロード』、『WIRED 日本版』、『季刊 本とコンピュータ』の3誌です。この3誌で仲俣氏は雑誌の創刊や廃刊という大きな場面に立ち会いました。
雑誌を作っているときはクラブ活動や共同体という感覚だった。いずれの編集部も編集スタッフの他にデザイナーが在籍しており、アイデアを形にしてくれるスタッフがいることで、一緒に何かを作っているという仲間意識が非常に強かった。
雑誌は読むだけより作るほうが面白い。作り手として関わり、その楽しさに気付ければ雑誌の魅力にも気付ける。
雑誌を読んでいることを特別と思っていない状態が、実は一番雑誌を愛読している。
1995年頃からDTP(DeskTop Publishing)によって雑誌を作るのが一般的になっていった。大きな出版社では雑誌の休刊が相次ぐ冬の時代となったが、一方で小さな会社からインディーズマガジンやリトルプレスが創刊され、魅力的な雑誌が数多く作り出された。DTPやパソコンの普及で雑誌を作るハードルが下がり、専門家に頼まなくても雑誌を作ることができるようになった。
各地の魅力的なミニコミ誌については、具体的にタイトルを挙げて紹介していただきました。
『スペクテイター』はデザインに凝った読み物が多い雑誌。編集2人とデザイナー1人で編集しているが、それぞれ遠隔地にいるため編集はDTPで行っている。刊行頻度は半年に一度で、その分海外等の取材に力を入れている。
『ミュレン』は身近な自然や山をテーマにしたリトルプレス。元「山と渓谷社」の編集者が創刊し、若い女性向け山雑誌として発行している。山ガールや写真を趣味とする若い女性が増え、それに伴って山雑誌や写真雑誌も女子化している。
ローカルな場所から広い世界へ発信する雑誌も増えている。
『飛騨』は飛騨産業株式会社が発行する家具のフリーペーパー。簡易製本で作られており、フランス綴じのように雑誌の下部を切って読むという面白い形態で発行されている。
秋田県の情報誌『のんびり』は編集経験者がUターンして秋田に戻り、観光のために自治体と協力して発行している。
兵庫県但馬地方の『弁当と傘』は地元の文化とお店を紹介するローカル誌。印象的な雑誌名は山陰から北陸の日本海側にある諺「弁当忘れても傘忘れるな」に由来するという。
普段は気が付かなくても、あらゆるところに名前も知らない雑誌が数多く存在している。最近、自分はそれを「雑誌昆虫説」と名づけている。犬や猫など有名な動物がマスメディアだとしたら、同じ生態系の中に名もない虫のようなサブカルチュア的な雑誌が多数共存している。大きな雑誌の減少だけを見て嘆くより、自分で面白い雑誌を作ろうと考えればよいのではないか。
雑誌のよいところは雑多であるということ。ピンポイントの情報が欲しくて読む人も多いが、実は読まなかった記事が面白かったりする。雑誌は新しい情報だけに価値があるわけではなく、10年20年経つと、アーカイブとして改めて価値が出るものである。
講演終了後
「東京マガジンバンク」所蔵の約16,000タイトルの雑誌のバックナンバーが並ぶ書庫を見学するバックヤードツアーを行いました。普段目にすることのない業界誌や専門誌、雑誌の創刊号のみを集めた「創刊号コレクション」約5,200誌をご覧いただきました。また、実際に雑誌を見ながら、仲俣氏に「文藝春秋」や「宝島」の解説をしていただきました。
講師 中俣暁生氏
講演会の様子
展示資料解説
展示資料
B1書庫
書庫資料解説
参加者の声
- 講演をきいて、ミニコミを作ってみようという気になりました。
- リトルプレス、ZINEの良さ、創る側の楽しみを話の中から感じ取れたのはとても良かった。
- 多忙な講師だけに迫力があり、非常にひきつけられるものがあった。雑誌の見方が多少変わりました。大変おもしろく拝聴いたしました。
- 雑誌の編集に携わりたくなるような興味深く、元気の出る講演でした。
展示資料リスト
仲俣氏の著作や編集者として携わった雑誌、約200冊を展示しました。
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