第67弾「服飾から見る中国」
2014年12月1日
広大な土地に50以上の民族が生活する中国。各民族は、気候や風土などが異なる地理環境において、それぞれの土地に適した社会形態、生活様式を有するようになりました。彼らの習俗は、長い長い歴史の中で時に融合、時に分離しながら、多様で豊かな文化として発展してきたのです。
服飾はそんな文化の象徴ともいえます。服装、装飾品には、当時の人々の生活や工芸等の生産技術、また思想、美学など人々の思考が反映されており、服飾をみれば、属する時代、民族、身分などもわかると言われています。
今回ご紹介するのは中国語で書かれた本ですが、中国語が読めなくても見て楽しい、中国の服飾についての図書をご紹介します。
『中國傳統銀飾 : 長命鎖』王金华著(湖南美术出版社 2013.6)
タイトルの日本語訳は『中国伝統銀飾:長命鎖』。長命鎖は、明清時代に流行した銀製の首飾りで、主に子供の無病息災を願う魔除けとして使用されていました。長命鎖には雲、蝶、麒麟、長方形など様々な形があり、表面は、めでたい意味を持つ文字や動植物の図案が、高度な技術で細工されています。この本には、130以上の長命鎖の写真が掲載されており、大切な家族への思いが伝わってきます。
『中國龍袍』黄能馥, 陈娟娟著(紫禁城出版社 2006.9)
タイトルの日本語訳は『中国龍袍』。「袍」は、中国式の丈の長い服を指しますが、ここでは、古代の皇帝や皇后、皇族、王侯将相が身に着けた「龍袍」を紹介しています。
統治階級の人々は、重要な祭礼や政務を行うときに龍の図案で装飾された「龍袍」を身に着け、自分の地位を誇示しました。北京故宮博物館蔵国家一級文物精品10点を含む330余点の豪華絢爛な「龍袍」は、時の皇帝権力の強大さをよく表しています。
『阅读织物上的历史:中华嫁衣文化调查』屈雅君, 马聪敏等著(陕西师范大学出版总社 2010.11)
タイトルの日本語訳は『閲読織物の歴史:中華嫁入衣裳文化調査』。中国の55の少数民族と漢族についてそれぞれ、民族の服飾概況、嫁入衣裳、既婚女性に対し行った結婚に関しての聞き取り調査、女性への恋愛や結婚事情についてのアンケート調査をまとめています。
各民族の嫁入衣装が多数紹介され、日常生活で来ている服であったり、「七彩服」と呼ばれる、原色7色を使ったカラフルな民族衣装であったり、また全身藍色のシンプルな服や、銀製の大きな帽子と首飾りをつけたりと、色も形も様々で、正に「多民族国家中国」を実感する本です。
『服饰中华:中华服饰七千年 第1〜4卷』黄能福, 陈娟娟, 黄钢编著(清大学出版社 2011.9)
タイトルの日本語訳は『服飾中華 : 中華服飾七千年』。石器時代から現代まで、時代ごとに服飾の文化的背景、服飾制度などを解説し、また豊富な図版を用いて服飾の形態、材料、文様、色彩等について説明しています。漢の冠制度の項では、17種の冠が紹介されており、社会等級が服飾で厳格に区別されていた封建時代が想起されます。また秦漢時代のアクセサリーとして髪、耳、首、上腕、指、腰につける飾りとして7種類、そのうち耳飾りだけでも4種類が挙げられており、様々に工夫を凝らして表現していたことがうかがえます。
都立図書館では、年間約1,500冊の中国語図書を収集しています。都立図書館の中国語図書、韓国・朝鮮語図書は、国立情報学研究所(NII)が運営するCiNii Booksでも検索することができます。