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第23回 『学問としてのオリンピック』

平成29年5月1日作成

今こそ、オリンピックの原点に立ち返ろうではないか――。

この本に込められたそんな強い気概を、きっと多くの人が感じられるのではないでしょうか。

本書は、オリンピックが私たちにとって、どのような意味を持つ存在なのかを、5つの視点から考察した本です。古代史、哲学、芸術、スポーツ科学、そして近代史の5つの論考には、共通する理念があります。それは、商業主義と国家主義という近年のオリンピックに顕著な傾向を取り払い、本来のオリンピックの意味を再確認するということです。

この本のなかでも特に興味深いのは、「第1章 古代オリンピック」と「第5章 近代オリンピックの始まり」、歴史の観点からオリンピックを捉えた2つの論です。前者では古代ギリシアで行われていた古代オリンピックを、後者ではフランスの貴族ピエール・ド・クーベルタンによってよみがえった近代オリンピックを考察しています。

この2つの論の対比によって、古代と近代、2つのオリンピックの共通点・相違点を具体的に知ることができます。共通点は、いずれもスポーツを通じて人間の優れた肉体・精神を醸成するものであること。相違点は、古代オリンピックでは勝利こそが最大の価値であった一方で、近代オリンピックでは「参加することに意義がある」とすること。この二点により、近代オリンピックは古代オリンピックの単なる再臨ではないことが示されます。全ての選手・観客が様々な形でオリンピックに参加し、スポーツを通じて人格を高め、その興奮と感動によって一体化できるもの、それが近代オリンピックなのです。

本書では他にも様々な観点でオリンピックが考察されています。あなたにとって、オリンピックとはどんな意味を持つ存在なのか。この本を読んで得られるヒントが、きっとあることでしょう。

『学問としてのオリンピック』 表紙画像

『学問としてのオリンピック』橋場弦編 山川出版社 2016.7(中央図書館・多摩図書館請求記号:780.6/ 5251/ 2016)

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