第78弾「色のユニバーサルデザイン」
2016年12月1日
人間は、情報の多くを視覚から得ると言われています。そのため、視覚に障害があると情報収集に大きな困難を伴います。
色の感じ方(色覚)が多数者(一般色覚者)と異なる場合には、受け取る情報の違いから他の人たちと異なった認識をしてしまう可能性があります。2006年に施行された通称バリアフリー新法は、バリアを施設側の課題と捉え、色覚が一般と異なる人たちなども広く対象者として加えました。この法律は地方公共団体の施設がバリアフリーに積極的に取り組む契機となりました。
図書館は、主として印刷物による情報を蓄積し、整理して提供する公共施設です。色による情報を数多く扱い、案内サインなどでも色による情報を発信しています。そこで今回は、色で情報を伝えるという観点をテーマにして、カラーユニバーサルデザインを取り上げた資料を紹介します。
『カラーユニバーサルデザイン』 カラーユニバーサルデザイン機構著 ハート出版 2009年刊
この図書は、豊富なシミュレーション画像により、色覚の違いで受け取る情報がどのように異なり、どんなことで困るのかを具体的に示しています。そして、どんな人にとっても見やすくて分かりやすいデザイン・色使いにするため、色相・明度・彩度を変える、地模様を施す、線の種類を変えるなどの改善方法とその成功事例が挙げられています。カラーユニバーサルデザインの基本図書と言えるでしょう。
『カラーユニバーサルデザインの手引き』 教育出版CUD事務局編著 カラーユニバーサルデザイン機構監修 教育出版 2012年刊
教育出版は、教科書を発行する出版社です。同社のホームページによれば、この図書は教科書編集用の社内資料として作成されたハンドブックを基にして出版したものだそうです。教科書編集という実務的な目的から作成されているので、具体例も豊富で、印刷物をデザインするとき傍らに置けば、すぐに役立つ優れものです。
『東京都カラーユニバーサルデザインガイドライン』 [東京都福祉保健局生活福祉部地域福祉推進課編] カラーユニバーサルデザイン機構監修 東京都福祉保健局生活福祉部地域福祉推進課 2011年刊
印刷物・ホームページの作成や、案内サインなどの設置・整備のため、カラーユニバーサルデザインのマニュアルを作成する自治体も増えています。この資料は東京都が2011年に作成したガイドラインです。印刷物などを作成する際の留意点が簡潔にまとめられており、チェックリストも付いています。
『考えよう学校のカラーユニバーサルデザイン』 彼方始著 カラーユニバーサルデザイン機構監修・協力 教育出版 2013年刊
色覚に違いがあると、学校生活のどんな場面で困るのか、どの子にも理解できるようにするには、どんな工夫があるのかなど、豊富なイラストで分かりやすく解説しています。大人向けに書かれてはいますが、平易な言葉による吹き出しなどを活用して、小学生が見ても分かるよう工夫されています。
「色覚とカラーユニバーサルデザイン」 芹澤昌子著 繊維製品消費科学 57巻5号通巻618号 (2016年5月) p.25-33
この号から連載を開始した、シリーズ「色彩とファッション」という解説記事の最初の記事です。カラーユニバーサルデザインの現在の状況が、きちんとよくまとまっています。薄明視(プルキンエ現象)という観点も加えた「子供の安全服への応用」、「ファッションのお店への要望と期待」、洋服の色を示す色タグの実験を取り上げた「全盲視覚障害者に色を伝える試み「いろポチ」」などの項目は、繊維製品の専門雑誌としての特色をよく示した内容です。
「誰にも見やすく!「カラーユニバーサルデザイン」の基礎知識」 [企業実務]編集部著 企業実務 54巻1号通巻746号 (2015年1月) p.66-69
カラーユニバーサルデザインの基礎知識を、短い解説記事としてまとめています。カラーユニバーサルデザインは今や企業にとって、製品開発や職場環境での配慮が不可欠な視点であることがわかります。