第158回『放浪の天才数学者エルデシュ』
あまり数学の成績が良かったとはいえない私ですが、図書館で働いていると心惹かれる数学の本に出会うことがあります。今回ご紹介するのは、生涯で1,000本以上の論文を発表した数学者、ポール・エルデシュの伝記です。
ハンガリー生まれの彼は、ユーモアと造語を愛し、喋るのはひどく訛った英語で、決まった家も職場も持たず、持ち物は最低限の荷物と数学のノートだけ。そして「きみの頭は営業中かね」という挨拶とともに世界中の数学者の家に現れては、数学の問題について何時間も議論し、数百人との共著論文を残しました。
本書では、そんなエルデシュの生い立ちや出身地であるハンガリーの歴史、彼が他の学問ではなく数学を選んだ理由などが、わかりやすく書かれています。また、ロン・グラハム、G・H・ハーディ、ラマヌジャン、フェルマーといったその他の数学者たちの逸話も満載で、拾い読みして気軽に楽しむこともできます。学生時代、数学に苦手意識のあった方にもおすすめの一冊です。
『放浪の天才数学者エルデシュ』ポール・ホフマン著, 平石律子訳 草思社 2000.4
(都立中央図書館請求記号:289.3/エ2002/601)